異常プリオン蛋白は単なる二次的マーカー?:BSE・スクレイピー


科学者たちが プリオン専門調査会の委員を辞任したことはよく理解できる。
はじめに結論ありきの議論は科学者の真摯な姿勢を馬鹿にしたものであろう
だが、わたしは、BSEの全頭検査は非科学的と思っている・・・
http://intmed.exblog.jp/1414329/


全頭検査にしろ・・・異常プリオンを検出することを目的にして、懸命になっているが(というか・・・それしか方法がないので、真偽はともかく・・・背ざる得ないのだろう・・・)、これが的外れになる可能性が報告されていた。



Jeffrey, M et. al. "Transportation of prion protein across the intestinal mucosa of scrapie-susceptible and scrapie-resistant sheep."
J Pathol 2006; 209: 4-14


解説記事のほうがわかりやすいだろう・・・
(節訳なので・・・もっとわかりにくい?・・・・そりゃすいません)



Prion Theory of Mad Cow Disease Called Full of Holes
http://www.medpagetoday.com/Neurology/GeneralNeurology/tb/2958

この研究は、プリオン蛋白が真に感染性があるかどうか疑問が呈され、プリオン蛋白が単にscrapie病原の存在の二次的マーカーではないかと示唆されるものであった。
だとしたら、この所見は、vCDJにおけるprionはうわべだけの感染性と考えられる。
この疾患の感染病因が存在する組織がどれであるかが留保されることとなる。
感染性のプリオン蛋白が消化管で分解されるので、特異的な遺伝子変異を有する人ではvCJDの感染したひとにくらべその感受性が低いとされているが、同じ遺伝子で、防御的・中間的・感受性が高いといった分けてみると、羊では同様にプリオン蛋白が吸収されたということが実験で判明された。

Martin Jeffrey, Ph.D.(Veterinary Laboratories Agency-Lasswade)らがthe Journal of Pathology4月号で発表した。

このことで、病原性抵抗性が異常蛋白の腸管からの吸収を遮断されるメカニズムによって行われているわけではない。ほかのメカニズムによるものに違いないとDr. Jeffreyが述べている。

ヒトのプリオン蛋白遺伝子の特異的な多様性、変異はプリオン病の感受性の決定因子であろうとされてきた。この多様性、遺伝子のcodon 129に生じるものは、アミノ酸methionineとvalineがこの部位にどちらが存在するかどうかである。Caucasianの約40%はmethionineのhomozygousであり、50%がheterozygousであり、残り10%がvalineのhomozygousである。(我が国では、全人口に占めるM/M型の割合は、英国よりも高いとされ15,16)、91.6%であるとの報告もある。この遺伝子型を有する人は他の型の人に比べ、vCJDの潜伏期間がより短く、かつ感受性がより強いか、またはそのどちらかであるとの指摘がされている。


ヒトにおけるBSE/vCJD感染の抵抗性はプリオン蛋白のvaline-valine 多様性を有するひとのプリオンの腸管での吸収が減少されることで影響され、ほかの変異のヒトはプリオン蛋白吸収が早いということで説明する研究者たちがいる。これは脳をたべるたもの疾患の進展に関して感受性が高いだろうと仮定された。

しかし、今回のDr. Jeffreyの羊の研究で、蛋白の異常・正常とも、すべてのgenotypeで同様に吸収され、蛋白の異常の増幅が生じ、胃腸のどこでもscrapieに進展することが示された。

scrapie抵抗性の程度の違う50匹の羊に実験を行い、脳の.pool homogenate、正常の脳、蔗糖溶液を手術的に作られた腸管ループに投与した。手術後、動物を15分から1ヶ月、もしくは症状出現時処分した。
免疫組織化学を用いて、暴露後、15分から3.5時間後に、絨毛状乳糜管や粘膜下リンパに存在することがしめされた。24時間後までに、樹状細胞内の摂取蛋白が、その後流入されたリンパ節内に見られることとなる。
しかし、この蛋白は、感染の複製が生じるとしられているPeyerリンパ組織で吸収されるものではない。リンパ組織での複製はプリオン蛋白の疾患関連形態が30日後蓄積され、18-22ヶ月後羊ではscrapieの発症が生じる。

著者らは、「この実験結果は、投与プリオン蛋白の吸収経路とscrapie病因複製とつながるプリオン蛋白de novo生成部位とのdiscrepancyがあることが示唆された。Peyerリンパ組織でプリオン蛋白は吸収されないという事実は、プリオン蛋白が真に感染性があるかどうか、そして、プリオン蛋白が単にscrapie病原体の二次的マーカーに過ぎないのではないかという疑問が生じる」と述べている。

さらに、本来疾患特異的なプリオン蛋白を多く含むはずの消化前混合物・消化液を消化管へ注入した直後でさえ、わずかなプリオン蛋白しか、高感度のWestern blottingでしか同定できない程度しかないという事実がある。

「放牧されている羊は自然には高度に感染した脳に暴露されるわけがなく、プリオン蛋白がほかの組織からわずかしか得られない。羊が感染する時には、消化抵抗性のプリオン蛋白がごく少量しかないというのは理論的な可能性はありえない。」

腸管に到達する前に48時間以上消化暴露され、この後、プリオン蛋白が少量しか測定できないがそれ以上に吸収されることはありえない。

プリオン蛋白より別の感染性物質が存在する可能性があることが重要である

by internalmedicine | 2006-04-12 03:19 | 感染症  

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