バチスタ手術

テレビ番組、特に、医療を扱う漫画と、現実を混同するのは子供だけかと思ったが最近は偉そうに何でも知ってるぞというようなスタンスのアナウンサーや評論家までも、コミックの世界と混同している。

私は昔から少年漫画は見ないので(実は少女漫画好き:生まれ持ってのケチなので漫画を自分の小遣いから買いたくないので姉のお下がりをみてたというだけだが・・・)、ブラックジャックなどで感化された覚えはない。同級生でさえ、感化された医者になった奴を複数知っているが・・・

NHK夜7時ニュースのキャスターが前のおもしろい奴からおもしろくないのに変わったので、チャンネルを変えたらブラックジャックをやっていた。なにやら悪の組織、医師会が、医者の免許を剥奪したり、与えたり、権謀術数を・・・って
私も一時期地区の医師会の理事やってたから知っているが・・・医師会にはそんな力はない。むしろ、名誉職と思ってる連中が変化をきらう惰性の集団・・・というのは言い過ぎか、でも・・・ほとんどは医療専門家としてまじめに取り組んでるぞ・・・

こういう違法性の高い放送をする局、漫画を出版する会社には断固と抗議すべきだろう

現実の団体への誹謗中傷であり、名誉毀損そのものである、放置する方が、医師会のまともな活動を阻害することとなるだろう。

医療系テレビドラマってのはワンパターンで、医療経営を前面に出す経営陣とヒューマニズムに陥った主人公サイドの戦いとその変形・・・いまの時代、経営を無視すればつぶれるしかないのだから・・・たまには、経営を無視した経営をおこなって経営不振に陥り、破産も認められずほぼ奴隷の如く金融機関から24時間労働を強制される主人公というのもやってほしいものだ(そういう事例が多くなった・・・テレビでは絶対報道しないが・・・)


バチスタ手術というのは、それを日本ではじめたということに敬意を表したい。しかし、メディアでの過剰演出により、実態とかなりかけ離れた空想の世界になっているようである。神の手ということばをあまりに多用しすぎるとかえって安物の紙の手になってしまう。

非専門家なのではずしているかもしれないが・・・自己学習のため、少々バチスタ手術をまとめてみた・・・



“left volume ventricular reduction” operation(左室縮小術)はBatistaが拡張した左室を切開し左室自由壁のサイズを手術的に縮小した手術。
Batista自体は左室機能改善のメカニズムをLa Placeの法則で説明していたが、説明不能なことが多い。オリジナルにはon beatの常体温心肺バイパスによるものであったが、cardioplegic arrestを用い、僧帽弁弁形成を加え、血行動態の改善がみられることが知られるようになった
http://mmcts.ctsnetjournals.org/cgi/content/full/2005/0628/mmcts.2004.000760



Batista手術と呼んでるのは日本くらいで、しかも、非医療者が主。

"Batista operation -.jp"でGoogle検索
すると だとほとんど検索されない。


Partial left ventriculectomy can be used to treat end-stage dilated cardiomyopathy. Further studies and a longer follow-up period are needed to fully assess the effects of this procedure.
終末期拡張型心筋症患者の部分的な左室形成術
30日死亡率22%、2年生存率55%
NYHA分類の改善は10%で認められないが
多くはClass I (57%)とClass II(33.3%)で残りが
Partial Left Ventriculectomy to Treat End-Stage Heart Disease
Randas J. V. Batista, et.al.
Ann Thorac Surg 1997;64:634-638


1998年の須磨さんたちの(http://www.cvi.or.jp/suma/koho2/koho2_14.html)報告だと・・

待機手術例:
IMSを必要とする10例を含む23名の患者さんにて早期・後期死亡率は8.7%、13.0%
生存者の84.2%(16/19)はNYHAI-IIへ回復

緊急例:
肺水腫・心停止による手術例では1/7の生存者

待機的な手術でないとかなり予後が悪い



"対象疾患としては、Batista自身2)は特発性拡張型心筋症のみならず、虚血性心筋症、弁膜症末期、ウイルス性心筋炎等、原因をとわず末期的な心筋疾患としているが、その後の多くの施設における報告は拡張型心筋症に限定している場合が多い"
(http://www.valley.ne.jp/~naganohp/batista.html)
としているが・・・

Surgical Ventricular Restoration (SVR):手術的心室再建(仮訳)
心筋梗塞後のうっ血性心不全手術法で、心臓発作後の瘢痕・動脈瘤にて心拡大。このためうっ血性心不全を生じる。SVRの目標は心臓を正常サイズ・形状へ回復させること。
SVRは冠動脈バイパス手術(CABG)とともに心臓への血流供給を保証することも行うs。また、心臓弁修復もなされることもある。
SVRの成績:
雑誌ACC2001年4月発表(Restore Group)
・SVRの信頼性・安全性を確認
・91%が機能回復
・85%が18ヶ月以内に再入院せず
・再入院率8.8%
http://www.hopkinsmedicine.org/CardiacSurgery/PatientCare/svr.html


と、虚血性心疾患にてむしろ評価されていることが分かる。


話題の中長期予後に関してはEur J Heart Fail. 1999 Dec;1(4):313-72年イベント無し生存率でみると37%との報告があり、落胆する結果も示されている



ラジオ波による方法(http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/105/11/1317)で、左室拡張末期容積29%、収縮期容積37%改善



上記図をみると、左室径は比較的術後保たれており、+αにてさらに生存率改善が期待もできるかも・・・

あくまでも、治療の一選択肢であり、病態や背景因子によりそれぞれの評価により治療法は決めるべきであろう。



ブラックジャックというのは空想のヒーローであり、現実的に自分でそうだと思いこんだ馬鹿な医者がある病院でむちゃくちゃというのもある。高度な医療技術ほど、包括的なチーム医療が必要であり、特定の優秀な医師だけで完結する世界なんて無いのである。経験豊富なMEや看護師・事務職・・・・などが重要というのは須磨先生も至る所で述べてるようであるし・・・

空想の世界との混同で、医者たちはいじめられているわけで・・・一方的な被害を被っている。

by internalmedicine | 2006-04-13 09:57 | 動脈硬化/循環器  

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