“糖尿病予防:日本茶6杯かコーヒー3杯、毎日飲んで”
2006年 04月 24日
“糖尿病予防:日本茶6杯かコーヒー3杯、毎日飲んで”と安直に記事にする前にもうすこし、専門家に聞いて書いた方が良かったのではないだろうか・・・>毎日新聞さん
食べ物・飲料にて、positiveな結果は報道されるが、negativeな結果は報道されにくい。negativeな情報があると報道被害と訴えられる危険性があるなど、面倒なことになるからか・・・
たとえば、お茶が体によいというのはよく報道されるが・・
緑茶が動物実験レベルだが、Free Radicalを介して肝障害をin vivoにて生じる可能性(Free Radic Biol Med. 2006 Feb 15;40(4):570-80. Epub 2005 Nov 9.)
の論文があるが、こちらは報道されない。確かに、かたや、人間での論文で、片方はin vivoながら動物実験だから、報道しない理由もわかるが・・・
新聞に、“糖尿病予防:日本茶6杯かコーヒー3杯、毎日飲んで”
1日に日本茶を6杯以上かコーヒーを3杯以上飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ、2型糖尿病にかかるリスクが3、4割下がり、太った人で特に効果が大きいことが文部科学省研究班(分担研究者・磯博康大阪大教授)の大規模調査で分かった。18日付の米国内科学会誌に発表した。
との記事が掲載されていた。
もとの論文は
The Relationship between Green Tea and Total Caffeine Intake and Risk for Self-Reported Type 2 Diabetes among Japanese Adults
http://www.annals.org/cgi/content/abstract/144/8/554
とのこと
To the editorをみると・・・
コーヒー・緑茶の消費と、2型糖尿病のリスクに逆相関があるとのことであるが、カフェイン摂取を強調するのは不適切と批判されている。後述の如く、カフェインに関しては批判的にとらえるのがトレンドのようだ・・・
また、さらに内容につっこんだReplyでは・・・・
flavonoidsを含む植物は糖尿病治療としてインド医学で用いられてきた。緑茶フラボノイドはインスリン用活性を有し、インスリン促進活性を有する
しかし、主成分であるepigal locatechin gallateはインスリンと異なり、ゆっくりとしたkineticsでいくつかのinsuin-activated kinaseに影響を与える。gluconeogenic enzymeをencodeしている遺伝子や細胞のredox statusを調整するprtein-tyrosine-phosphorylationに影響を与える。epigallocatechin gallateは抗糖尿病薬となるかもしれない。
台湾の研究者たちは、脂肪細胞中のglucose transporter IV量を多くすることを見出し、インスリン抵抗性への影響することが判明した。
(http://www.annals.org/cgi/eletters/144/8/554#2967)
・・・なるほど、糖尿病と緑茶の関係は、基礎的にもエビデンスが固まりつつあるようである。
しかし、別の論文をみると・・・
いくつかの前向きコホート研究で、規則的コーヒー摂取と2型糖尿病の有意な逆相関が報告されている。USコホートではカフェイン抜きコーヒーとの逆相関関係がある程度報告されているが、これはカフェイン以外の成分の有効性を示唆するものである。
直腸結腸癌のリスク減少が無数の症例対照試験で示されているが、前向き研究では有意な相関は一般的には見られてない。
コーヒー・カフェインの消費は男性におけるパーキンソン病減少をもたらすが、女性では効果がないようであるが、これはエストロジェンの影響によるところが大きい。
閉経後エストロジェン療法を用いてない女性で、2つの大規模前向き研究で、コーヒー消費とパーキンソン病は逆相関しているがエストロジェン使用者では相関関係無し。
NHS(看護師健康研究)では、エストロジェン使用者にて1日6杯以上の消費にてパーキンソン病リスク有意増加
USでの前向きコホート研究2つで有意にコーヒー消費と自殺リスク増加の相関関係がみられた
しかし、コーヒー消費と自殺に関しては、J形の相関がフィンランドで見られ、8杯にて中等度の消費に比べ有意に自殺率増加が見られた。
大規模前向きコホート研究はコーヒー・カフェインが多いと冠動脈疾患・心筋梗塞リスク増大とする現象を明確にできなかった。
しかし、コーヒー消費量は重度冠動脈疾患リスクの増大とは関連がある。
煮たフィルターされてないコーヒーの消費は総コレステロール・LDLコレステロール増加させるが、フィルターされたコーヒーは脂質に対しては有害作用は見られない。
煎ったコーヒーのコレステロール増加因子として、diterpenes cafestol とkahweol が同定されている。Diterpenesは湯で抽出され、ペーパーフィルターでのぞかれる。フィルターにかけられたコーヒーはcafestolやkahweolを微量しかふくまない。対照治験では濾過の有無に関係せず、心血管疾患の独立したリスク要因であるホモシステイン濃度を増加させる。
ランダム化対照治験でh、カフェイン化コーヒーは収縮期 (2.0--2.4 mm Hg)・拡張期血圧 (0.7--1.2 mm Hg) を軽度だが、有意差をもって増加させる
コーヒー消費は、、収縮期・拡張期血圧を軽度増加させるが、33才を超えれば影響なし
A new proposed guidance system for beverage consumption in the United States
American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 83, No. 3, 529-542, March 2006
とくに、カフェインの有害性が否定できない状況という印象をうける
カフェインは軽度利尿作用があり、ヒトの研究では500mg/dまで脱水や、慢性の水バランス異常を来すことはないとされている。カフェイン含有水分は急性の利尿作用を有し、400mg/日までは心疾患・高血圧・骨粗鬆症・高コレステロールと相関しない。緑茶は6杯で400mg/日というのが、まぁ許容範囲か?
また、以前からお茶と貧血というのは肯定されたり、否定されたり・・・一定しない命題だった。
放射線ラベルした鉄の赤血球への取り込みに関して、ポリ・フェノール含有飲料は鉄吸収に関して異なる結果をもたらす。
全ての飲料は鉄吸収の抑制をもたらし、用量依存的に吸収抑制を生じる。
総polyphenol l20-50mgを有する飲料水はパン食での鉄吸収を50-70%抑制
polyphenol 100-400mgを有する飲料水は、60-90%抑制
紅茶はココア・他のハーブ茶より吸収抑制効果が高い。
British Journal of Nutrition, Volume 81, Number 4, 1999, pp. 289-295(7)
http://www.ingentaconnect.com/content/cabi/bjn/1999/00000081/00000004/art00006
オレンジジュースは吸収を2倍にするが、Teaは75%減少させる
NEJM Volume 329:190-193 July 15, 1993 Number 3
現実的には、Teaも境界的な鉄不足状態の場合はやはり鉄代謝に影響をもたらす
(EJCN May 2002 Vol.56 (5) 379-386)
緑茶にアルミニウムは多く含まれ(J Nutr. 1988 Jan;118(1):52-60.
)、透析患者などでは問題になるだろうと想定される。
by internalmedicine | 2006-04-24 16:27 | 医療一般