メタボリックシンドロームを考え違いしてないか?
2006年 04月 25日
生活習慣病対策の推進に関して、メタボリックシンドロームの概念を導入した対策の推進するそうである。
メタボリックシンドロームって・・・そんなにすごいんか?でふれたが、メタボリックシンドロームはエビデンスがまだ不確定であり、臨床的推定としてはまだ未熟なのである。
日本人での前向き研究というのは、薬剤がらみ以外ほとんどなされていない。生活習慣の改善でどの程度のインパクトがあるのか・・・まだ不明なのである。
“メタボリックシンドロームは心血管疾患予防において,LDLコレステロールに次ぐ治療対象と考えられている.欧米人と同様に日本人においても,メタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患の独立した危険因子である.メタボリックシンドロームでは内臓肥満,インスリン抵抗性を背景とし,リポ蛋白異常,高血圧,アディポサイトカイン,炎症反応の増悪等の病態が相互に影響し,動脈硬化性疾患の発症進展に寄与している.欧米に比しLDLコレステロールがそれほど高くない日本人において,メタボリックシンドロームの動脈硬化性疾患の危険因子としての意義は高く,日本における診断基準を基にしたエビデンスの集積が急務である”(The Lipid(0915-6607)16巻5号 Page465-470(2005.10)
などと・・・“意義は高く”の文面は、その後の“エビデンスの集積が急務”と矛盾した表現であるが、疑問点が残っていることはメタボリックシンドローム信奉者たちも認めている。
上述の文献のごとく、メタボリックシンドロームと内臓肥満などとの概念の違いは炎症論が深く関係していることであり、炎症論がその議論になければ、メタボリックシンドロームの存在意義がない。
ところが、研究者の厚労省への提出資料(「メタボリックシンドロームの考え方
~判定と生活習慣支援のイメージ~」)では
炎症の考えが完全に抜け落ちている。肥満とメタボリックシンドロームを混同している連中が厚労省の施策を牛耳っているのである。・・・・あぁ・・・日本の将来は・・・
などと・・・愚痴をいいながら以下の論文を読んだ
Effects of Etanercept in Patients With the Metabolic Syndrome
Arch Intern Med. 2006;166:902-908.
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/short/166/8/902
【背景】脂肪組織由来のサイトカイン、TNFαを含むサイトカインは、メタ簿リックシンドロームの炎症に寄与する。そのTNFαを抑制した効果をみたもの。
【方法】56名の対象者、メタ簿リック症候群を有し、ランダムにetanercept 50mgとプラセボに割付、4週間、1週ごとに皮下注射
CRP値をプライマリ・エンドポイントとする。
fibrinogen、IL7、adiponectinなどの炎症性マーカー、インスリン感受性、体組成への影響をみたもの
【結果】ベースラインの特徴が各グループ同様。2つのグループとも耐用性良好。
CRPは有意にetanercept群で減少(--2.4 ± 0.4 vs 0.5 ± 0.7 mg/L; P<.001).
Adiponectin値はetanercept群で増加 (0.8 ± 0.4 vs --0.3 ± 0.3 ?g/mL; P = .03)
fibrinogen値は減少(--68 ± 16 vs --2 ± 31 mg/dL [--2.0 ± 0.47 vs --0.06 ± 0.91 ?mol/L]; P = .04)
IL6は減少傾向 (--1.2 ± 0.8 vs 0.5 ± 0.5 ng/L; P = .07)
体組成・インスリン感受性は変化なしだが、HDLはetanerceptで減少 (--1 ± 1 vs 2 ± 1 mg/dL [--0.03 ± 0.03 vs 0.05 ± 0.03 mmol/L]; P = .06)
【結論】 EtanerceptはCRPを減少し、心血管リスク指標である他の炎症性マーカーを改善する。Etanerceptは内臓肥満の炎症cascadeを遮断するのかもしれない。
さらに、TNF-αの心血管リスクにおける長期的影響を見る必要がある。
メタボリックシンドロームに生活習慣改善の介入をすることは当然だが、いつのまにか肥満と混同してしまう、低脳施策が悲しい
by internalmedicine | 2006-04-25 09:20 | 動脈硬化/循環器