甲状腺剤とH. pylori感染・萎縮性胃炎
2006年 04月 27日
胃酸分泌障害と甲状腺正常状態(euthyroid)多発性甲状腺腫治療患者でのthyroxine必要量を検討したところ、H.pylori感染胃炎and/or萎縮性胃炎ある患者では22-34%ほど投与量増加が必要となった。
Thyroxine in Goiter, Helicobacter pylori Infection, and Chronic Gastritis
NEJM Volume 354:1787-1795 April 27, 2006 Number 17
甲状腺疾患へのthyroxineの投与量は広く研究されている。経口thyroxineの吸収効率に関して適切な投与量を設定することが重要。経口thyroxineは主に腸粘膜を通して吸収特に十二指腸・回腸レベルで行われるが、1-3時間にてピークに達し、投与量の62-82%が吸収される。thyroxineの腸の吸収は、患者の年齢・adherence・食習慣・吸収動態・吸収不良・他薬剤との相互作用を含めた治療の有効性の鍵の決定因子である。
薬剤の相互作用研究がthyroxine吸収にも関連しており、H.pylori感染に関連した胃炎・胃体部の萎縮性胃炎、両者に関連して胃の酸環境が変わる。同様にPPI治療によっても変わることとなる。
PPIとH.pyloriとも西側ではよくなされており、萎縮性胃炎と甲状腺疾患との関連も再評価されている。胃酸分泌障害を有する甲状腺腫を有する患者で治療域に達するためのthyroxine投与量を解析したもの
多結節性甲状腺腫とGERDを有する、thyroxineとomeprazole治療している患者10名で、血中thyrotropin値をomeprazole治療前後で評価。
中央値比較で
前:1.58mU/L
後:1.70mU/L
37%ほどthyroxine投与量減少
臨床的重要性として、無酸症におけるthyroxineの腸での吸収阻害のメカニズムは不明である。今回はnaive hormoneよりlipophilicでない塩という形での投与なので、標的細胞・受動的拡散・キャリアを介した抑制経路なども関与している可能性、ionization statusやthyroxine分子の性状なども関与している可能性もある。
薬剤相互作用とともに、胃酸の状況も、薬剤吸収・動態に対して大きな影響を与えるのだろう。
by internalmedicine | 2006-04-27 07:11 | 消化器