メタボリックシンドロームの危うさ・怪しさ
2006年 05月 09日
ところで、 やたらとメタボリックシンドロームの話を聞くが、また厚労省の陰謀か? という話を聞くことがある・・・これは実は鋭い?・・・厚労省は、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を個人の責任として、保険給付から外す、あるいは、保険給付比率を減じようという意図があるのではないかという噂があるのである。・・・この噂を信じれば、教授様方が利己的な名誉心のため国民皆保険制度崩壊に寄与しているともいえるのである。東北大学の先生はそれに準じた報告をされているし・・・
この日記では繰り返しになるが、生活習慣病対策の推進に関して、メタボリックシンドロームの概念を導入した対策の推進するそうである。(メタボリックシンドロームを考え違いしてないか?)
メタボリックシンドロームって・・・そんなにすごいんか?で述べたが、
・炎症論がその議論になければ、メタボリックシンドロームの存在意義がない。
・メタボリックシンドロームの利用法は不明である。
・エビデンスがまだ不確定であり、臨床的推定としてはまだ未熟である。
と、専門家の中でも批判があることを述べた。
新しもの好きの偉い先生たちと役人どもが、これを縦に生活習慣病全般を医療保険制度から排除しようとする動きとつながっている。
(生活習慣病などのリスク要因とされる「喫煙」「肥満」「運動不足」の三つ全部に該当する人は、全く該当しない人に比べ医療費が4割余り高くなることが6日、住民約5万人を9年間追跡した厚生労働省研究班(班長・辻一郎東北大大学院教授)の調査で分かった。http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060506/eve_____sya_____002.shtml)
これは大変遺憾な動きで、病気を一要因だけのせいにして、多因子成因を無視して、一方的に保険給付を削除しようとする政府の動きに一致しているのである。
メタボリックシンドロームの基準設定の推移をみれば、脳血管リスクをGolden Standardとしたものでなく、単なる状況証拠に基づく、お偉いさんたちの和合からなりたつものであることが分かる。
メタボリックシンドローム診断基準検討委員会は,日本動脈硬化学会,日本肥満学会,日本糖尿病学会,日本高血圧学会,日本循環器学会,日本内科学会,日本腎臓病学会,日本血栓止血学会から選ばれたメンバーにより・・・(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準.日本内科学会雑誌,94(4):794-809,2005)が発表された。
これは、複数の危険因子が重複して高頻度に生じる病態は「メタボリックシンドローム」と呼ばれ,WHOや米国のAdult Treatment Panel IIIによって診断基準が提唱されていますが,生活習慣や人種によりシンドローム構成要因の頻度などが異なることから,わが国独自の診断基準の策定が待たれていました。
2004年4月,松澤 佑次委員長のもと各学会から代表者が選ばれ,ついにわが国におけるメタボリックシンドローム診断基準の検討委員会が発足しました。
(http://jas.umin.ac.jp/metabolicsyndrome.html)
腹腔内脂肪蓄積,プラス2つ以上のco-morbidityとする案が合意され・・・のカットオフポイントの設定について,各担当学会が提案し,事務局にて報告書としてまとめることになった。
基準値となったウエスト周囲径は、腹部CTで測った内臓脂肪の断面積が百平方センチメートル程度の人のデータから割り出された。この値を超すと、高脂血症や高血糖などの危険因子を複数、発症する人が多くなる。男性より女性の方が五センチ太いのは、同じウエストサイズでも女性の方が皮下脂肪が蓄積していることが多いためだ。
おそらく、方法論としては・・・この方法なのだろう
繰り返すが、本来の目的の心血管リスクに関するものでなく、いわゆる内蔵脂肪(それもCTというある検査方法をGolden Standardとしたもの)を推定する基準を使ったものに過ぎない。本来あるべきはこの症候群が真に症候群たるにふさわしいものかを日本人で確認する作業が必要であり、真の学者であれば慎重さが必要である。科研費などで首根っこを押さえられているから無理なのだろうか?
しっかし、こんなもので、国策を決めてもらっては困るのである。・・・厚労省さん
by internalmedicine | 2006-05-09 09:27 | 医療一般