エコノミークラス症候群発生は低酸素・低気圧のためではない

denominationが悪いといわれてたのに、そのままが多いエコノミークラス症候群

ANA解説のエコノミークラス症候群の解説では気圧の変化と酸素濃度の低下との関係はすでに書かれていない。ほんとに、低圧・低酸素が凝固系に関わるという仮説も有ったのだろうか?・・・一応、その否定のための論文。

Effect of Hypobaric Hypoxia, Simulating Conditions During Long-Haul Air Travel, on Coagulation, Fibrinolysis, Platelet Function, and Endothelial Activation
JAMA. 2006;295:2251-2261.
長距離の飛行機登場と静脈血栓塞栓の関係は議論が続いている。客室内の酸素分圧低下は地上での座位無動状態と比べそのリスクが増強するかどうか不明であった。

【目的】低圧低酸素分圧、飛行機搭乗中生じるが、hemostasisの活動性を増すかどうか検討したもの
【デザイン・状態・参加者】
一重盲験交差試験、低圧低酸素状態にて八時間座位状態にして健康ボランティア七三名で検討。

【メイン・アウトカム】
凝固活性、線溶系、血小板機能、血管内皮機能のマーカーの変化

【結果】
大気圧(normobaric exposure)でも、座位と日内変動による変動がある。
しかし、低圧・大気圧下でも有意な差はない。


たとえば、低圧状態 vs 大気圧にて
thrombin-antithrombin compllex: 0 ng/mL (95% CI, --0.30 to 0.30 ng/mL)
prothrombin fragment:0.20 nmol/L f1 + 2 (95% CI, --0.03 to 0.01 nmol/L)
D-dimer:1.38 ng/mL (95% CI, --3.63 to 9.72 ng/mL)
endogenous thrombin potentia:2.00% for (95% CI, --4.00% to 1.00%).


【結論】
低圧低酸素状態が、静脈血栓塞栓のリスクが低い人に対して、長距離飛行機搭乗において凝固系における前凝固状態の変化をもたらすということは示唆できなかった。




トイレに行くのをおそれて飲水を控えたり、隣の人に気兼ねして体を動かさない・・・などの方が影響が大きいような気もするのだが・・・


ところで、エコノミークラス症候群に関連して、頻度は少ないながら、旅行歴のある人が卵円孔を介した卒中の可能性が高くなるという報告(Increased frequency of cardioembolism and patent foramen ovale in stroke patients with positive travel history suggesting Economy Class Stroke Syndrome (ECSS))がある。・・・ちょっと怖くなった。

by internalmedicine | 2006-05-17 14:41 | 動脈硬化/循環器  

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