シンプソンのパラドクス・・・髄膜炎のペニシリン投与

このパラドクスに関しては、Wikipediaに解説があった。


BMJ 1994;309:1480-1481 (3 December) の解説・・・

以下の事例は、年齢をグループ分けしてない場合全体ではインスリン非依存性の方が死亡率が高い。ところが、年齢別にグループ分けすると、40歳超の場合は逆転してしまうという現象が生じている。
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【Simpson's paradox】
グループ組み合わせにより各群における治療成功率が、全体の結果と逆転するという状況が出現する。この現象により、特に利益・有害性を考慮する医学的な研究への影響は統計学的に問題ある結果をもたらす、これをSimpson's paradox(Yule-Simpson効果)と呼び1952年記載されている。2つの要因の組み合わせによる。介入群の比率のバランスの問題と、そののサブグループで異なるイベント発生率があった場合に生じる現象である。





BMJにて、このSimpson’s paradoxが関与していると考えられる事例が報告されている。

Parenteral penicillin for children with meningococcal disease before hospital admission: case-control study
BMJ 2006;332:1295-1298 (3 June)
158名の髄膜球菌疾患疑診例と診断された子供で、2/3がペニシリン注射投与を受け、ペニシリン投与群の方が非投与群より死亡率が高かった。
しかし、横断研究の問題点で、入院前の重症度はやはり入院前ペニシリン投与群の方が高かった。ペニシリンの有害性は除外できないが、重症の子供にペニシリン投与されたというバイアスが大きいと著者らは結論づけている。



1)入院前抗生剤使用の子供はreaching hospitalで死亡する確率が高い
2)入院前抗生剤にて生存率が改善するかどうかは結論づけできない

髄膜炎疑診例でGPで見つかった場合、GPによりみられている子供はそうでないこともより軽症であるなどが考えられ、そこにシンプソン・パラドクスが関与している可能性がある。解説(BMJ 2006;332:1297-1298 (3 June))では、入院前経口ペニシリンが死亡率を減少させるというもの。抗生剤注射の結果は一致せず、患者比率を考慮すれば有益性を示すデータとなった。

医学統計だけで、直接生死に関する決断などの判断がなされることはさすがに滅多にない。しかし、論文によっては、その決断に影響を与えるなど、統計的結論を下すときに重い責任を著作者たちは感じるだろう。

データ分析は慎重に、そして、その解釈も慎重に!




昨日講演を聴いたのだが、まさにこのパラドクスがスライド中に存在した。喘息患者に随意に治療選択をさせてその結果である治療法が正しいと説いているのである。
教育講演なのだから始末が悪い・・・・と感じた。

by internalmedicine | 2006-06-05 14:21 | 医療一般  

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