コーヒーと肝硬変

紹介の論文は、コホート研究で、コーヒー飲用によりアルコール性肝硬変へのリスク軽減が示されたという話

こういう嗜好品の健康への影響という研究の発表というのを連日のように眼にする。
この主の研究では、スポンサーシップはなんらかの影響をうけていないということを前提として明言する必要があり、あるのであれば、公明正大であるということを示さなければまともな論文ではないと思う。

Coffee, Cirrhosis, and Transaminase Enzymes
Arch Intern Med. 2006;166:1190-1195.
(コホート研究)
アルコール性肝硬変の相対リスク(199)はコーヒー飲用しない群と比較して
1杯未満: 0.7 (95% confidence interval [CI], 0.4-1.1)
1-3杯:0.6 (95% CI, 0.4-0.8; P<.001)
4杯以上:0.2 (95% CI, 0.1-0.4; P<.001)



非アルコール性肝硬変131名で
1杯未満: 1.2 (95% CI, 0.6-2.2)
1-3杯: 1.3 (95% CI, 0.8-2.1)
4杯以上: 0.7 (95% CI, 0.4-1.3)


各subsetでも一致した相対リスクであるが、横断解析にて、コーヒー飲用は高AST、ALT値の頻度減少と相関。
例:4杯異常のとき高AST値のオッズ比は0.5(95%CI 0.4-0.6 P<.001)で、高ALT値は0.6(95%CI 0.6-0.7 P<.001)で、アルコール高摂取量にて逆相関であった。



(Caffeine-related disordersから)

<考察から>
タバコなどの他の因子とは関連しない機序。
コーヒーの代謝の障害が何らかの影響を与えている。
Ann Epidemiol. 2002 Apr;12(3):202-5.

仮説としては、
1)Corraoら(Ann Epidemiol. 2001;11:458・65.)は、カフェイン入りの他の飲料では肝硬変への逆相関はみられないとのこと
2)Weusten-Van der Wouwらはcafestolとkahweolを含むコーヒー油、ビール、粉末にコレステロール高値に働き、TGやALT亢進に働き、GGTやcreatininを減少させる。それは投与終了後、GGT活性は基礎値まで下がる。
3)他に、400ほどのコーヒー中の薬理的な働きを有する物質を有する。


ウィルス性肝炎・肝硬変、NASHに対するエビデンスではない。また、NASHなどはcafestolなどのコレステロールへの影響からより慎重であるべきと思う。



本来、研究のスポンサーシップというのは、“pariah status”(のけ者)の状況にスポンサーを陥らせることが大事で・・・たばこ産業の悪例
喫煙が疾患の原因であると導き出すための2つのアプローチ
1)非喫煙と喫煙者の比較研究
2)喫煙と関連するリスクを減少するタバコ関連の研究

タバコ業界がスポンサーとなった研究は、後者の方で、
低タールタバコが通常のタバコより有害性が少ないなどといった意味の少ない研究であり、それによってイギリスのトラストは健康への配慮を示していると自画自賛している。

JTの環境CMも似たようなもので、禁煙という悪習慣を目先の矮小な配慮を強調することでごまかし、喫煙に対する風当たりを最小化使用としているのである。

・・・があげられる。



引用論文の本来の主旨から離れてしまったが、コレステロール代謝との関係など、肝臓疾患患者にコーヒーたくさん飲んでくださいとは私には指導できない。・・・という感想・・・レビューが出されるとずいぶん論点の整理ができると思う。

些細な知識をひけらかされるより、問題点が整理された情報のほうが貴重で、大事といいたくなるようなことが多いですな・・・この業界

by internalmedicine | 2006-06-13 09:32 | Quack  

<< サッカー・ワールドカップに負け... 老人ではβ‐遮断剤は降圧剤第一... >>