CIAP(慢性の特発性軸索神経障害)の基礎疾患検査としての糖負荷試験:IGTによる神経障害

はなしはいきなり横にそれるが、織田信長も糖尿病性神経障害で、原因として、糖尿病であった可能性があったらしい


今日のNEJMも症例検討もpolyneuropathyであり・・・なかなか教育的
ニューロパチーのところだけ抜き書きすると・・・

末梢神経障害の第一タスクは、適切な検査手段により治療可能の疾患かどうかを考慮すること

・ニューロパチーのもっとも多い原因は糖尿病であり
特発性のpolyneuropathyの多くは糖尿病を合併し、糖尿病を有しない特発性polyneuropathyは耐糖能異常を有することが一定比率で存在する。
・血中B12値が正常下限以下なら、methylmalonic acidやhomocyteineを測定する必要がある。


急性ならGuillan-Barre症候群や免疫機序を介したものが考えられる
亜急性なら、toxicや代謝疾患、たとえば重金属・ビタミンB12欠乏などが考えられる。



さて、その中で、CIAP(Chronic Idiopathic Axonal Polyneuropathy:慢性の特発性軸索神経障害)は必ずしも少ない疾患ではなく、非常に緩徐な、下肢のしびれ・筋力低下減少を生じるものであり、時には手まで及ぶ。定義によるが、原因は不明である。

リスクとして糖代謝異常が新しく注目されており、ADAクライテリアで2003年改訂されたが、2時間後糖負荷試験結果が必須ではなくなったが、CIAPのサブタイプは同等に糖代謝異常を有し、6割程度に観察されるとのこと
(ref.ADA 糖尿病ガイドライン 2006年改訂版)

CIAPの除外診断には糖負荷試験を!

Value of the Oral Glucose Tolerance Test in the Evaluation of Chronic Idiopathic Axonal Polyneuropathy
Arch Neurol. 2006;63:(doi:10.1001/archneur.63.8.noc50336).
慢性軸索多発神経障害(CIAP)の7-30%に基礎疾患があり、糖尿病、遺伝性疾患、毒物暴露、原発性アミロイドーシスなど大小の有髄神経線維へ影響を与えるものである。
結果的に診断されてなかった血糖代謝が、一般住民比較すると、CIAPと関連があるとのこと。さらに2時間後の経口血糖負荷試験を用いた方法でさらにその頻度が増加することが判明した。


一般住民マッチさせた場合の33%に比べ、62%と約2倍空腹時血糖以上の頻度
2003年ADAクライテリアに従えた39%の空腹時血糖異常
血糖異常として2時間後のOGTTを用いたとき62%と診断比率が増加した(P<.001)
糖代謝異常比率は、感覚運動神経性、感覚性、小神経繊維性神経障害という3つの分類で同様であった (P = .60, .72, and .61)


ここまで読んで疑問なのだが・・・

CIAPと耐糖能異常の関係はby-standerなのか、main streamなのかさっぱり分かってないにもかかわらず、今回の論文はなぜかmain streamのような書き方・・・病因だというなら、ぜひその証拠を挙げてほしいものである。






糖尿病による神経障害としては、糖尿病性多発神経障害(distal symmetric polyneuropathy)が主、diabetic polyradiculopathy(1つ異常の神経根単位の分布)、mononeuropathy(単一の脳神経・末梢神経単位の機能障害)と自律神経障害と習ったものだが、若干複雑になってきているようである(知らなかった・・・)

Classification of Diabetic Neuropathies

Symmetric
1. Distal, primarily sensory polyneuropathy
a. Mainly large fibers affected
b. Mixeda a)
c. Mainly small fibers affecteda a)
2. Autonomic neuropathy
3. Chronically evolving proximal motor neuropathy (a,b)
Asymmetric
Acute or subacute proximal motor neuropathy (a,b)
Cranial mononeuropathy (b)
Truncal neuropathy (a,b)
Entrapment neuropathy in the limbs

a)しばしば疼痛をともなう.
b)一過性であることが多い(部分的、完全)


臨床的には、広汎な反射の低下、筋群を含む場合、脱髄の特徴である
一方、末梢の疲労・筋力低下にて踵関節の選択的な反射低下など、とくに感覚神経のストッキング分布などを伴う場合は典型的な軸索性の神経障害である。
(参考)





chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy(CIDP)<解説>
慢性進行性あるいは再発性に末梢神経の散在性脱髄が生じ、筋力低下あるいは感覚障害を示す免疫性神経疾患である。1975年にDyckらが独立疾患単位提唱
(Subacute demyelinating polyneuropathy responding to corticosteroid treatment Archi Neurol. 35:509-516 1978)

Distal acquired demyelinating. symmetric neuropathy ( DADS)
http://www.fmu.ac.jp/home/neurol/guideline/PDF/GBS_CIDP.pdf
高齢の男性に多く、臨床症状は比較的欽一であり、緩徐進行性で対称性四肢優位の感覚障害あるいは感覚運動障害を特徴とするもので、しばしば感覚性失調や振戦をともなう。電気生理学的には、近位部に比較して遠位部で優位な刺激伝導遅延を特徴とする脱髄所見を示し、“IgM-MGUS neuropathy”とも呼ばれている(CIDP-MGUS)

Lewis-Sumner syndrome
multifocal acquired demyelinating sensory and motor (MADSAM) neuropathy
multifocal motor neuropathy (MMN)
なども・・・



Abnormal Glucose Metabolism May Contribute To Chronic Nerve Disorder
ということで、解説記事が掲載されている。・・・

2時間後OGTTにより、神経障害を有する62名(62%)で空腹時血糖代謝の異常を、糖尿病と診断されてないケースで見出されている。一般のヒトでは33%であるので、この結果神経障害のリスク要因と考えるとこの記事(Science Daily)でも書かれている。


"糖尿病学者の大だの通常の考えは、長期的な高血糖によるものとの従来の考えだが、distal axonal polyneuropathyは以前考えていたより早期に生じるのではないかと考えられるとのこと。

この研究により、IGTでのneuropathyは従来の糖尿病に由来するものより軽度で、糖代謝異常早期にみられるのかもしれない。

by internalmedicine | 2006-06-15 12:17 | 動脈硬化/循環器  

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