RBP4とインスリン抵抗性
2006年 06月 15日
Golden Standardがはっきりしないものだが、得手勝手に、いろんなものを入れ込み、日本の腹囲の基準に関してはごく少数のデータを根拠にしていることから想像される如く、おそらく簡単にデータ構築できるという理由だけで、入り込んできたものだろう。(役人たちの恣意的世論づくりのため寄与しているので、覚えめでたい、腹囲測定)
ウェスト径だけですべてが決まるような・・・疑似医学用語は捨てるべきと私は思う。本来の概念からいえば、ウェスト径などは付録に過ぎないお話である。
医学的に話をするときは、metabolic syndromeでよろしいのでは・・・と
さて、今回、このインスリン抵抗性・メタボリックシンドロームなどに関してひとつの病態機序の説明が加わった。・・・比較的きれいなお話で、しばらく注目されることとなるだろう(と・・・勝手に思う次第である)
(以下がシェーマ・・著作権配慮し、原著引用のみ)
Retinol-Binding Protein 4 and Insulin Resistance in Lean, Obese, and Diabetic Subjects(NEJM Volume 354:2552-2563 June 15, 2006 Number 24 )
血中RBP4値は肥満・IGT患者、2型糖尿病、非肥満患者、2型糖尿病および非肥満、家族歴を有する非糖尿病患者におけるインスリン抵抗性の程度と相関する
RBP4高値は、メタボリックシンドロームの構成要因であるBMI、W/H比、血中TG値、収縮期血圧高値、低HDL値と相関する
運動トレーニングは、インスリン抵抗性が減少した群において、血中RBP4値減少と相関する。脂肪細胞GLUT4蛋白と血中RBP4は逆相関する.
2型糖尿病は肥満とインスリン抵抗性が密接に関連している。この2つの病態の理解が今後の予防・治療への新しいアプローチのつながるだろう
2型糖尿病の特徴は、インスリンの分泌不全・肝臓のブドウ糖号税促進、目標組織(筋肉、脂肪、肝臓)でのインスリンの作用抵抗、トリグリセリド含有粒子と遊離脂肪酸の増加などであり、これらの状態は個体差はあっても存在する。
遺伝的要因・環境要因(脂肪やカロリー摂取過剰、肥満やインスリン抵抗を生じる運動不足)の相互作用が疫学的にこの2型糖尿病に関するエビデンスが構築されてきた。
最近は、多くの遺伝子多型型によりリスク増加が報告され、PPARγ遺伝子(インスリン活動性に影響を与える)、Kir6.2(内向き整流Kチャンネルでインスリン分泌を調整する)、calpain 10(ubiquitously expressed cysteine protease; the promoter region of hepatocyte nuclear factor)、a transcription factor( that regulates pancreatic beta-cell function)、最近は・・・transcription factor 7-like 2 (TCF7L2)(、Wnt signaling pathwayへ影響を与える腸管内分泌細胞のproglucane遺伝子の発現調整である一つのtranscription factor)など
TCF7L2がもっとも強力といわれるが、これらのlocusの遺伝的変異が、15-20%ほど糖尿病のリスクに影響を与えていると思われる
adipokineと呼ばれる、様々な蛋白を産生する臓器として、脂肪組織に関心が向けられてきている。食欲・体重調整、energy expenditure、インスリン感受性の調整など生理的機能に対する役割を有しているものである。Leptinは、1995年に発見され、adiponectin、TNFα、resistinを含む他のadipokineとともに同定されその性質が調べられている。
ハーバード大学のBarbara Kahnらの研究グループであるGrahamらの論文で、retinol-binding protein 4(RBP4)と呼ばれるadipocyteの蛋白産物がインスリン作用系を調整し、インスリン抵抗性の進展に重要な役割をはたすことが判明
脂肪組織のGLUT4欠損マウスが筋肉・肝臓でのインスリン抵抗性をしめすことを同グループがしめしているが、これは脂肪組織でのインスリン抵抗性が他臓器へ影響を与えることを示すものとして注目される。
脂肪組織試料からのDNA arrayの解析で、RBP4の発現増加が診られた。RBP4は筋肉インスリン抵抗性の原因となり、肝臓のブドウ糖産生酵素phosphoenolpyruvate carboxykinaseの発現増加させる。
日本の研究者から、肝臓でのPPAR-γ2の人工的発現(ウィルスベクターによる)による脂肪組織との関連、特に迷走神経肝枝切断術や迷走神経肝枝の選択的求心線維ブロックにより、迷走神経の求心性線維がこの末梢組織への効果に関与しているという話が話題になっており、こちらの方は新聞メディアで書かれていたので省略するが、こちらも大変重要な話と思う
肝臓からの神経経路によってエネルギー消費と全身のインスリン感受性が調節されるScience 16 June 2006:Vol. 312. no. 5780, pp. 1656 - 1659
日本語訳
by internalmedicine | 2006-06-15 18:05 | 動脈硬化/循環器