クロルヘキシジン・コリスチンルーチン服用による人工呼吸関連肺炎減少エビデンス
2006年 06月 16日
Guidelines for the Management of Adults with Hospital-acquired, Ventilator-associated, and Healthcare-associated Pneumonia
では
経口クロルヘキシジン(CHX)使用により一部症例( coronary bypass grafting)ではICU獲得性HAP予防的であるが、データ集積されるまでルーチン使用は推奨されない .
とのことであった。
これが広汎に適用されるかどうか?
人工関連肺炎(VAP)は合併症・死亡率の高く、院内感染にてもっとも多い感染である。抗生剤による経口的な消毒はVAPを幻想させるが、抗生剤抵抗性病原菌の潜在的選択につながる可能性があり、推奨できない。
CHX(クロルヘキシジン2%)とCHX/コリスタン(CHX/COL,2%/2%)がVPAへの進展、口腔内・気管内コロナイゼーションを増加させるかどうかの仮説
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 173. pp. 1348-1355, (2006)
【目的】VAP発生頻度やVAPへの進展タイミング:CHX or CHX/COLの効果決定
【方法】48時間以上人工呼吸必要な患者:ランダム化二重盲検プラセボ対照トライアル:3群:CHX、CHx・COL、プラセボ(PLAC)口腔内6時間毎投与
口腔咽頭ぬぐい物を連日採取し、グラム陽性(GP)・グラム陰性(GN)細菌定量化解析
気管内コロナイゼーションを週2回モニタリング
【結果】385名の患者をエントリー、PLAC:130、CHX:127、CHX/COL:128
ベースライン背景比較可能、VAPの日々リスクを治療群で比較
・CHX:65% (hazard ratio [HR] = 0.352; 95% confidence interval [CI], 0.160, 0. 791; p = 0.012)
・CHX/COL:55% (HR = 0.454; 95% CI, 0.224, 0. 925; p = 0.030)
CHX/COLは有意に口腔咽頭GN・GP細菌コロナイゼーションを減少
CHXはGP菌のみ減少
気管内コロナイゼーションはCHX/COL患者で減少し、CHX患者ではそれより少ない。
人工呼吸期間・ICU滞在、ICU生存率は差異無し
【結論】CHXやCHX/COLの局所的経口除菌はVAP発生頻度を減少させる。
COLは風前の灯火の薬剤なのだが・・・コリマイシンS散などを利用することとなるだろう。
・CHXはトローチなど存在するが、アナフィラキシーショックなどの報告もあり注意必要だし、ポビドンヨード製剤で0.1%~0.01%,グルコン酸クロルヘキシジン製剤では0.0002~0.0004%,塩化ベンザルコニウムで10~0.1μg/ml の範囲まで,毒性など粘膜毒性の問題も存在する。CHX入りの歯磨き・うがいなど必要かもしれない。いずれにせよ、直接、検討されたわけではないので代用使用は注意が必要である。
院内感染対策としては、スポンサー付きの講演会報告だが、よくまとまっている。
by internalmedicine | 2006-06-16 16:03 | 感染症