治験に関係する医師はその会社の薬剤を処方する傾向にある
2006年 06月 21日
一般開業医の立場とすれば、情報提供をだまっっててもしてくれる製薬会社はありがたい存在であるが、情報源としてのバイアスはすさまじいとおもって間違いない。
かれらの意見を鵜呑みにすることの危険性を自覚することが大事だろう。
困ったことに、製薬会社が偉い教授の意見として化けたり、疑問を差し込む余地のないと考えてしまうきれいな御本となってたりすることがあるから、油断ならないのである。
ガイドラインというのも、果たして正しいのかというとかなり疑問が残るわけだが、製薬会社スポンサーの臨床トライアルがこのガイドライン順守性(adherence)に悪影響を与え、治療パターンや薬剤の好みに影響を与えるか・・・という問題とのこと
Andersenらは、観察研究にて、トライアルに毒されてない医師と、製薬会社スポンサーのトライアルを行っている医師を喘息治療で比較。医師の国際喘息治療推奨へのadherenceと薬剤選択を評価しているが、ガイドライン順守性には問題がないようである。・・・ただ、薬剤選択には当然影響をもたらす。
How Conducting a Clinical Trial Affects Physicians' Guideline Adherence and Drug Preferences
JAMA. 2006;295:2759-2764.
喘息治療ガイドラインのadherenceに関して、トライアル施行医師と対照医師では相違がなかった。
しかし、トライアル施行医師は対照群より会社の薬剤を使う傾向がある。
ICS使用患者の比率はトライアル施行医師68.5%、対照で59.1%
ガイドライン順守:OR(2年):1.00 95%CI 0.84-1.19
トライアル施行医師に於いて、喘息治療の処方量は、対照群より増加(6.7%; 95% CI, 3.0%-11.7%)
治験会社のICS投与を好む傾向(OR 1.26 95%CI 1.04-1.54)があり、その会社の他の喘息治療処方も増加する。
Editorialでは、エビデンスベースのガイドラインへの医師の順守性は、良好で、問題はないが、ノルウェーよりUKで4倍サイアザイドの処方が多く、逆に、ノルウェーではβ遮断剤が4倍多いなど国家間の相違はその国の製薬会社の営業努力によるということになるのかもしれないとの事例も紹介。
私も、最近、phase IIIを含む治験を行ったが、治験MRなどを通して得られる情報と、通常のMRからの情報の質の違いを実感しているところである。こういうことが、治験製薬会社の処方比率増加するという因子になってるのでは?
広く浅い通常のMRと違い、専門的に一種薬剤を勉強してきているわけだから、当たり前といえば当たり前だだが・・
情報活動により消費者行動が変化をもたらすというのは自由市場では当たり前のことである。しかし、医療・医薬品選択が、景品や寄付行為などでガイドラインなどの本来の順守事項から逸脱が行われることは倫理的に問題であろう。
全然本文と関係ないのだが・・・NHKの午後2時前のテレビ、スタジオパークに往診の関係でたまたま見ることがあるが、飯野奈津子解説員と称する御仁・・・医療関係に対して個人的恨みがあるようで、法体系の不備まで、すべて医療機関の現場へ責任に負わせるコメントばかり発している。残念ながら、厚労省とのパイプが強いらしく、ご意見番となっているらしい立場のようである。関東ローカル(「特報首都圏スペシャル」)で、医者の僻地への強制勤務との御卓説を展開したのは、この辺にあるのだろうと推定される。『患者本位の医療を求めて』という表面上の哲学だけで、問題の本質からずれ、報道の平等性を忘れているNHKというのはすでに報道の資格はない。・・・記者クラブ体質からぬけだせない記者をいつまでも解説員としておくNHKには放送局の資格はない。
このスタジオパーク、奇跡の詩人の釈明放送以来、不信感が積もり積もっているのだが・・・愚弟的事例は今後、ポチポチと書くことにするが、あまりに恣意的すぎ
報道関係者としては資格がないとおもう・・
TBSのシロインゲン豆放送被害に対しては結局文書処分だけだったようだ。
医療事故報道やEV事故の報道に関してはあんなに熱心なのに、報道機関の不祥事や倫理欠如に関しては消極的な報道のみである。NTVなどはダブルスタンダードがまかり通っているわけだが・・・
オリックス宮内氏の村上ファンドとの関係の報道、竹中はなぜ総務省の大臣ポストをほしがったかか・・・あまりにこの日記から離れるのでやめるが・・・メディアの倫理性
by internalmedicine | 2006-06-21 12:01 | 医療一般