ビタミンによる癌予防・治療のシステミック・レビュー

ビタミンの類ははなから疑われないらしく、滋養強壮という意味不明の文言が流布されている。
滋養:身体の栄養となること。また、そのもの。
強壮:体が丈夫で、元気がある・こと(さま)。


強壮がビタミンであるのだろうか?
fortificationという言葉はビタミン欠乏状態で用いられた言葉である。“強壮”という言葉への誤訳と思われるのだが・・・


マルチビタミン・ミネラルサプリメントに関する否定的見解相次ぐ!で既出であるが、今回は癌予防・治療の観点からのシステミック・レビュー
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Antioxidants Vitamin C and Vitamin E for the Prevention and Treatment of Cancer
Journal of General Internal Medicine, Volume 21, Number 7, July 2006, pp. 735-744(10)
38の研究にて、ビタミンCやビタミンEが生存率改善へ有益性があるというエビデンスは少ないということが示された。


ATBC Cancer Prevention Study Groupは個々の癌においてもその有益性破認められず、また、プール化された相対リスク(腫瘍タイプ限定せず)はα-tocopherolのみ0.91(95%CI 0.74-1.21)で有意差無しであった。
全原因死亡率は有意でない。
Linxian General Population Trialにおいて、ビタミンC(molybdenumを含む)相対リスクは 1.06(95%CI 0.92-1.21)
ビタミンE(βカロテンとセレニウム併用)では0.987(95%CI 0.76-1.00)

統計学的に有意な利益性が認められた研究は3つで、ビタミンC(BCGを含む)で膀胱癌に対する単発トライアル と ビタミンE(ω3脂肪酸を含む)の進行癌への生存率改善。ATBCトライアルでは6つの個々の癌の分析にて、α-tocopherol治療の前立腺癌予防効果(RR 0.64 95%CI 0.44-0.94)


“システミック・レビューではビタミンCやビタミンE使用にて一般の人での癌予防や癌治療の手助けになるという仮説を証明できなかった。
個々の利点をしめす研究があり、更なる検討が必要であろう”と結論づけ




出版バイアスの多い、ビタミン研究の世界、この微弱な差さえ消失するかもしれない



健康食品購買行動に関する分析、大手企業がこの分野に参入が著しいのでなされているとは思う。ただ彼らの関心は常に如何に購入させるかであり、以下のフレーミング効果を利用するかであろう。

人が質問に答える時、一般的には人間の意思決定は、質問や問題のされ方によって大きく変わることに着目し、期待効用理論に対する反例として取り上げたのはカーネマンとトヴェルスキーである。
 彼らは、問題が表現される方法を、判断や選択にとっての「フレーム」と呼び、フレームが異なることによって判断や選択が導かれることを「フレーミング効果」と名付けた。

(引用)

本来は、行政や医療人は如何に無駄なものを購入させないか・・・というスキームがあるべきである。両者の中に、業者と同じ視線で患者を見ている連中がいることが嘆かわしい

by internalmedicine | 2006-07-05 10:35 | Quack  

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