DHEA(S)のサプリメント認可は大人の事情らしい

アンチエージングの世界では、DHEA(S)がよく取り上げられている。

だが、hucksterism(売らんかな主義)でない検討ではどうかというと、予想通り玉石混淆であり、確定的エビデンスがない。

以下のレポートでDHEA(S)のまとめがなされていた。
DHEA: Super Hormone or Super Hype?

食事・栄養サプリメントの世界では、DHEAやDHEA(s)の表面的な神秘性を抱くものもいるように思える。全てのホルモンの母、super hormone、若返りホルモンの泉と呼ばれているそうだ。しかし、DHEAは誇大宣伝されてるようである。アメリカは食物サプリメントとして処方箋無しでDHEAは使える唯一の国である。1994年Dietary and Supplement Health and Education Act後認められ、FDAが1985年決定した禁止事項が覆された。最近、androstenedioneというテストステロン前駆型のサプリメント制限の試みがなされ、野球選手のMark McGWireで有名になったものである。しかし、行政的圧力に屈して、2004年Anabolic Steroid Control Act2004でDHEAを禁止薬物から免除された経緯をもつ。


国際オリンピック委員会は協議に於いてDHEAを禁止している。なぜアメリカは矛盾する行動をとるのだろう?

なぜ他の国と相反する考えなのだろう?



DHEA(S)の効果・有益性は、androgenやestrogenへの転換されて発現されるが、この半減期は比較的短く1-3時間であるが、DHEA(s)は10-12時間で、1日中比較的一定である。DHEA産生は20代から減少しはじめ、10歳毎に約10%減少し、DHEAサプリメントは骨粗鬆症、sarcopenia、認知機能低下、libidoの低下、冠動脈疾患などの中年の病気を先延ばしできるという報告がある。内容を吟味すれば、これらの文献は"mixed bag"(玉石混淆)であり、確定的なエビデンスがあるとは言えない状況にある。


【骨粗鬆症】
・効果に関してばらつきが大きすぎ、コンセンサスを得ることは困難

【Sarcopenia ・ 肥満】
両者とも多くの相反するエビデンスが多く存在する
1967-2001年の文献のmeta-analysisでは筋量・筋力増加に関するエビデンス無し、2003年のKamelらのレビューでは反対の結論で、有用とのこと

寄与因子としてはValentiの論文ではDHEA(S)が筋力増加とふくらはぎの筋量の独立した因子であり、2004年11月の論文ではVillarealらが、DHEA 50mgで腹部脂肪減少に働いたと

【認知機能・Mood】
DHEA低値はうつと相関。改善効果を認めたレビュー。この研究は短期間で6週間から4ヶ月までである。
2005年はじめ、Schmidtらが二重盲検プラセボ対象交差試験男女46名にて大・軽度うつに関して有益性がしめされた。
SolerteらはDHEAサプリメントがv脳のangiogenesis、neuroprotectionや脳の微小血管exhange of substances・nutrientの障害を引きおこす状態である脳に対してascular endothelial growth factor secretion増加させる可能性を示唆。しかし、まだヒトでのアウトカムは不明

【Libido and Sexual Function】
DHEAの男性のlibidoへの影響の研究は欠如。Dhatariyaらのレビューも女性のみ検討している。結果は様々。70歳以上の女性においてlibidoの有意な改善をみたとBaulierらが報告

性的機能に関してはTurnaらがDHEA(s)低値にて女性の性機能低下を示唆


【冠動脈疾患】
1986年、Barrett-ConnorらがDHEA(S)と全原因・心血管死亡率の男性での逆相関関係を報告
2004年、Bjorneremらの長期(1974からの)Tromso Studyにおいて虚血性心疾患男性における低DHEA(S)を示した。しかし、他の慢性疾患、卒中、糖尿病、癌、喘息でも見られた。
2003年、MullerらはDHEA(S)にて、血小板凝集抑制、内皮のマクロファージ集積抑制、平滑筋増殖、動脈のコレステロール再吸収に関与し、スーパーオキサイド・フリーラジカル産生抑制、男性のエストロジェン様効果の促進など・・
血管内皮機能やインスリン感受性改善、PAI type 1濃度の改善などの小研究がある


【Quality Control and Safety】
DHEAのデータが一定した結果が出ない、現実に関与する問題はUSにおける監視やregulationの不足である。政治的圧力により、野菜、barbasco根、野生メキシコヤマイモなどから由来というだけで、DHEAはまだOTC食事サプリメントである。しかし、OTC植物サプリメントで、薬物扱いでないため、FDAはその品質保証に関して無力である。
事実、Parasrampuriaらは、16DHEA製品の7つのみ液状クロマトグラフィーにて、表示値の90%ー110%であっただけで、全く含まれないもの1つ、2つはごくわずか、逆に150%も含まれるものがあった。

現時点で、DHEAははたしてsuper hormoneであろうか?・・・答えはNoである。


確かに、体重減少、情緒改善、心血管予防的に働く可能性はある。特に女性のlibidoにおいては改善の可能性があるなど、DHEAの潜在的利益は多く、潜在的リスクを凌駕する可能性がある。ただそのためには十分なエビデンスの構築が急務である。

by internalmedicine | 2006-07-07 17:56 | 医療一般  

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