骨粗しょう症薬エビスタは乳がんを減少させるが、致死的な卒中増加
2006年 07月 14日
Effects of Raloxifene on Cardiovascular Events and Breast Cancer in Postmenopausal Women
for the Raloxifene Use for The Heart (RUTH) Trial Investigators
NEJM Volume 355:125-137 July 13, 2006 Number 2
Evistaは
・ 冠動脈イベントへの優位な影響はない(533 vs. 553 events; ハザード比 0.95; 95%CI 0.84 - 1.07)
・ 浸潤性乳がん (40 vs. 70 events; ハザード比 0.56; 95%CI 0.38 to 0.83)で、絶対リスク減少(ARR)
・ 乳がん:1000人年1.2 (おそらく、受容体陽性乳がんへの影響によるもの)
グループ分け(全原因、卒中による)による違いはないが、Evistaは致命的な卒中を増加させる (59 vs. 39 events; ハザード比 1.49; 95 %CI 1.00 - 2.24)、絶対的リスク増加 :1000人年あたり 0.7
静脈血栓塞栓:103 vs. 71; HR 1.44; 95%CI 1.06 - 1.95; )、絶対的リスク増加 :1000人年あたり 1.2
臨床的な椎体骨骨折:64 vs. 97 HR 0.65 95%CI 0.47-0.89 )、絶対的リスク減少(ARR) 1000人年あたり 1.3
絶対的リスク増加・減少を比べれば、このエビスタという薬剤を使う気にならなくなる
製薬会社であるLillyは、FDAにEvistaの癌予防の承認を申請する予定であった。Evista+TamoxifenはSERMs(Selective estrogen receptor modulators)で、骨粗鬆症治療・閉経後の症状治療のためのエストロジェン代替薬である。エストロジェンと異なり、SERMsは血管運動症状(hot flushes)を軽減しない薬剤である。RUTHトライアルは1998年に開始、冠動脈イベント減少の可能性を仮説にして開始され、2002年WHI報告でエストロジェンが卒中・血栓塞栓イベント増加、乳癌増加に働くことが報告されたもの。
エストロジェン受容体のmodulatorは心血管リスク増加に働くことも類推されるとのこと
上記報告は製薬会社スポンサーの研究であり、都合の悪いデータが含まれるが、比較的公正なのではないかという印象をもつ(裏の事情は知らないが・・・)
絶対的リスク減少・増加というのを必ず考えなければならない。
昨日、MRさんが持ってきた資料
Aという疾患慢性期のBという合併症発生
C剤投与群 531名中3名、プラセボ投与群 533名中15名のであったとのこと
これを世界D学会に国家公務員なんたら病院のE先生が発表したとのリーフレット
これを計算すると・・・
Relative Risk (RR) 1.02(95%CI 1.007-1.04)
RRR-0.023 ( -0.039 ~ -0.0071)
ARR-0.022 ( -0.038 ~ -0.0071)
NNT-44 ( -141 ~ -26)
2%程度の合併症Bの減少頻度で、大層な宣伝をするのである。
この薬剤Cは頻拍という副作用がついて回っており、虚血性心疾患や心機能低下がうわさされている・・・それを考えれば、このBenefitは相殺される可能性がある。(あくまで想像だが・・・)
この批判に対するためには、原因死亡率や総死亡率の比較があるべき・・・だが、提示がなかった・・・・不十分なMR活動といわざる得まい
by internalmedicine | 2006-07-14 11:58 | 運動系