収縮機能保持心不全(Heart Failure with Preserved Ejection Fraction)増加
2006年 07月 20日
わたしの住んでるところは心エコーに強い循環器医師の巣窟のため、この概念に関して心エコーやっとの実地医家と循環器専門医(心エコー専門医といった方がよいか)との話がかみ合わない。BNPの話をしても、結局、エコーの話へ流されてしまう。・・・で、結局、「駆出率正常だから問題なしですよ」・・と、はぁ・・・と魔邪のようにほえてしまいたくなるが・・・
・・・当地では、この専門家たちせいで、闇にうもれた、この収縮機能保持心不全が増加しているという印象があるのだが・・・
米国での検討で、やはりHeart Failure with Preserved Ejection Fractionによる入院が増加しているらしい・・・
Prevalence and Outcome of Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
NEJM Volume 355:251-259 July 20, 2006 Number 3
入院患者の後顧的研究で、EF正常での心不全頻度1987と2001年で有意に増加している。
生存率はわずかにEF低下患者より正常EF患者の方が有意に高いが、15年間でEF低下患者群のみ改善
Outcome of Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
NEJM Volume 355:260-269 July 20, 2006 Number 3
2802名の心不全入院患者で、31%がEF正常
EF減少患者たちと比べて、高齢者、女性、高血圧・心房細動の既往が多いということが判明
しかし、臨床症状、合併症、再入院、死亡率はほぼ同様。
対象の収縮機能保持心不全は如何にして選別されたか?
ここ10年心不全の頻度は安定化し、心不全診断後の生存の尤度は増加していることは心不全の特徴が変化してきている可能性を示唆する。一般人口分布の変化が心不全リスクのリスク要因の頻度の変化をもたらし、治療戦略の改変が必要となってきているかもしれない。心不全の包括的特徴はEF維持された心不全の存在により変化している。
International Classification of Diseases, Ninth Revision, Clinical Modification (ICD-9-CM)のコード428の診断名で退院DRGコード127の診断での退院とマッチさせて、両者一致したものを対象にしている。
congestive heart failure (ICD-9-CM: 428)というだけで・・・よいのだろうか?
一応・・・・診断に関して書かれてるところのガイドラインに準じていると思うのだが・・・
一般的に、確定診断は心室の弛緩率が低下していることによりなされる。この生理学的な異常は左室充満圧の増加(正常左室容量と正常収縮能)という所見
診断は、一般的に心不全の典型的症状と兆候によりなされ、超音波にて弁異常(大動脈(【注】aorticと書かれている)収縮、僧帽弁逆流など)無しのケース
他の疾患などの可能性をできる限り除去しなければならない
心不全・正常左室駆出率患者の鑑別診断心不全の誤診断
左室駆出率の不正確な測定
原発性の弁膜疾患
拘束性(infiltrative)心筋症
アミロイドーシス、サルコイドーシス、ヘモクロマトーシス
心外膜炎(収縮性)
periodeicな、可逆的左室収縮障害
重篤な高血圧、心筋虚血
高代謝demandによる心不全(high-output states)
貧血、甲状腺中毒、動脈静脈瘻
右室心不全を伴う慢性肺疾患
肺血管疾患を有する肺高血圧
心房の粘液腫
原因不明の拡張機能障害
肥満
非侵襲的方法(特にDoppler echocardiographyに頼る方法)は正常LVEFの心不全診断に重要な役割を果たしているが、重大な限界がある。何故なら、心臓充満パターンは心臓への負荷状況により、年齢、心拍、僧帽弁逆流により非特異的な・一過性の変化が存在するからである。
エコーとBNPの組み合わせで診断の正確性を改善させる可能性がある。
たとえば正常BNPで、正常の拡張期充満パラメーターの場合は心不全でありそうもない
赤文字のところを是非念頭に置いてほしいものだ・・
by internalmedicine | 2006-07-20 12:08 | 動脈硬化/循環器