3薬剤にてコントロールできてない高血圧患者

テレビなどをみると、内科医というのは存在意義が少なく、血圧が高いと言えば降圧剤、かぜをひけばかぜ薬という・・簡単な仕事と思われているようである。
他人の仕事は簡単に見えるのはお互い様だが・・・まぁレスペクトされなければされない仕事しかしなくなる様な世の中である。
日本においては施策のタイトレーションをせず、やりっぱなし行政なので、官僚や政治家の感情の赴くまま政策を決定してしまう。底の浅い行政であり、世論誘導にだけは長けており、厚労省OBの国立大学の教授を利用して、医者は袖の下をたくさんもらってると証拠もなく吹聴し、その後反省もせず、べつの天下り教授が、肥満は自己責任だから、保険診療から外せという・・・憤懣やり方無い。

無駄話が多くなったが・・・
以下の話は、“仕事をしてない”と思われている内科医がどのように、脳内で仕事をするかという過程の一端になるのではないだろうか・・・

以下の高血圧治療中の患者をどうするか・・・という話(NEJM Volume 355:385-392 July 27, 2006 Number 4)

高血圧歴の長い70歳の女性
β遮断剤 テノーミン100mg/日
ヒドロクロロチアジド ハイグロトン12.5mg/日
ACE阻害剤 ロンゲス 40mg/日

合併症の変形性関節炎のためブルフェン400mg/日投与中だが

外来にて収縮期血圧164~170mmHg 拡張期92~96mmHg

K 3.8mEq/mL、Cr 1.2mg/dL
尿微量アルブミン(-)



膝関節症などのため、消炎鎮痛剤を併用していることはありがちで、わたしなどは、まずNSAIDsの高圧阻害作用に思いをはせる。そして、薬剤として適切であるかどうかであるが・・・他にもいろんな要因を考慮しなければならないのである。


まず思うのが・・・抵抗性高血圧症(refractoryあるいはresistant hypertension)


治療抵抗性高血圧の定義:一般的に、
resistant hypertension(RH)の定義について、いくつかの不一致点はあるが、多くの権威者は、利尿剤を含む3種類のfull-doseの薬剤にて血圧 140/90mmHgを超える場合としている。(the Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation and Treatment of High Blood Pressure and European Society ofHypertension-European/Society of Cardiologyでも採用)


この回のNEJMでは
糖尿病・腎疾患(Cr>=1.5mg/dl、尿たんぱく>=300mg/日)
利尿剤を含むこと
としているので注意が必要。



どっちゃにしろ、今回の事例は、抵抗性高血圧症としてはまだ不確実

次は、血圧測定方法を顧み、そして各阻害因子について考慮する・・・

【正しい血圧の測定】
・患者は5分間安静にて心臓の高さで保持された状態で上腕で測定
・適正なカフの幅(この狭短により5~15mmHgは違う)

・タバコの影響は5~20mmHg増加させるので15~30分は禁煙
・カフェイン入りコーヒーでも増加する
(それ以外に、日本で多いのは、強精作用と称する“健康ドリンク”(後述する昇圧成分を含むものが多い:朝鮮人参なども))

・頻脈・レニン値の異常の場合、2次性高血圧症に注意

・高齢者の激しい血管の収縮への抵抗(虚脱困難)に注意が必要:Pseudohypertension(Osler法は否定的見解も多いことに注意!)


【阻害因子】
・消炎鎮痛剤:NSAID
・交感神経興奮薬剤:麻黄・フェニレフリン・コカイン・アンフェタミン
ハーブ系サプリメント(朝鮮人参など)、たんぱく同化ホルモン、エリスロポイエチン、食欲抑制物質

・腎血管拡張性のPG産生抑制で、ACE阻害剤・ループ利尿剤への影響

・食事:
・過度アルコール
・過度ナトリウム摂取(食塩感受性の問題があり個人差あり)
・肥満

【二次性高血圧の評価】
高血圧全患者の10-17%に存在することを念頭に評価すべき
・糖尿病性腎症・高血圧によるnephrosclerosis(腎硬化症)
・アテローム硬化型:腎血管障害(fibromuscular dysplasiaと違い、治療後も残存することが多い)

・原発性アルドステロン
・褐色細胞腫
・睡眠時無呼吸

【治療】
・ナトリウム摂取をなるべく控える:2~8mmHg
・減量
・適切な運動:30-40分の身体運動で4~9mmHg
・節酒:2~4mmHg

・薬物の服用順守

①容量縮小(量負荷):利尿剤、アルドステロン拮抗薬
②交感神経過活動減少(β遮断剤)
③血管抵抗性減少(ACE阻害剤・ARB)
④平滑筋弛緩((DPHカルシウム拮抗剤、α遮断剤)
⑤直接の血管拡張(ヒドララジン、minoxidil)


β遮断剤+ACE阻害剤はレニン・アンジオテンシン系亢進を打ち消す可能性などコンビネーションの考察がなされている。
(エビデンスは少ないが・・・)
治療抵抗性の場合は、その量や組み合わせを再検討して、管理回数を増やす必要がある。


α・β遮断結合剤(labetalolとcarvedilol)、クロニジン、β2アドレナリン遮断剤、レセルピン(低用量)及び血管拡張剤なども考慮されるかもしれない

Adhrenceについてがトピックな話題




Resistant hypertension: When your blood pressure is difficult to control (Mayo Clinic):高血圧コントロールをあきらめるな

Managing the Patient with Hard-to-Control Hypertension(AFP 1998)


Resistant Hypertension: Diagnosis and Management:Journal of Cardiovascular Pharmacology and Therapeutics, Vol. 11, No. 2, 113-118 (2006)

refractory hypertension:La Batide-Alanore A. Refractory hypertension. Arch Mal Coeur Vaiss. 2000;93(11 suppl):1474-1478.

Resistant hypertension:Kaplan N. J Hypertens. 2005;23:1441-1444.(文献購入先)

by internalmedicine | 2006-07-27 10:52 | 動脈硬化/循環器  

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