終末期をregulationで規定するな!

終末期やそのtransitionの期間に関して明確な定義を示すエビデンスは存在しない。
規則上の定義(regulatory definition)はケアや研究の質に関して障壁となる。
信頼できるprognosticationがない限り、終末期は、特定のtimeframeで定義すべき代物ではない。
(米国のNational Institutes of Health State-of-the-Science Conference Statement on Improving End-of-Life Care )
・・・などと、米国では、終末期に関して、明確な定義を示すregulation自体を否定している。


ところが、日本では・・・

終末期患者「延命施さず」病院の56%…読売調査
調査は国立保健医療科学院の協力を得て、今年5~6月、全国の病院(病床数100床以上)から無作為に抽出した約600施設に、大学など特定機能病院を加えた計685病院に対し、「延命措置の実態」に関するアンケートを送付。有効回答を寄せた240病院について分析した。(中略)



日本の方向性は、司法判断にゆだねようとする動きが、司法・メディアどころか、介護・医療専門家もその方向性の動いているようである。

これは、東海大安楽死事件の横浜地裁判決がゴールデンスタンダードとなり、司法が医学的な考察より重視されてしまったという日本の特殊事情によるものではないかと思う。

これが、その後の福島の産婦人科逮捕事案、富山の安楽死疑惑事案などに影響を与えているのである。


日本での、終末期定義を羅列してみる。
「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避となった状態」とする.(日本老年医学会の「立場表明」で述べる「終末期」)

「不治かつ末期の状態」とは、合理的な医学上の判断で不治と認められ、延命処置が単に死期を延長するに過ぎない状態を言う。当面は、明確に診断された悪性腫瘍に対象を限定する。また、「過剰な延命処置」とは、その処置によって患者が治癒に向かわずに、単に死期を延長するに過ぎない処置を言い、苦痛緩和のための処置は含まない。(富山医科薬科大学倫理委員会承認(平成9年5月6日)

「不治」かつ「末期」の状態が終末期と定義される。
「不治」、すなわち致死性疾患で進行を阻止する手段がない状態は医学的に定義できるが、「末期」という用語は時間概念を含むことが常であり、一般的に定義が困難である
学術の動向 2006.6 終末期医療─医療・倫理・法の現段階─



・・・司法は、医療での議論を踏まえずに、勝手に定義して、勝手に医者を犯罪者にしたてあげている。司法の横暴そういうものが医療へ悪影響を与えていることを自覚してもらいたい。


終末期とは、癌以外にも存在し、癌以上に苦しい思いをする疾患がある。それを無視して、制度化された癌とHIV関連疾患のみ対象とされる終末期医療・・・終末期の定義をregulationに求めすぎるための弊害のひとつだと思う。

メディアの暴走(メディアの問題)による恣意的な世論形成→終末期医療への司法判断のゆがみ(regulationで縛れない概念まで司法権限拡大)と、メディア・司法・行政が、医療・医学を軽視した挙句、実地での医療の崩壊拡大へつながっているのである。

by internalmedicine | 2006-07-31 11:13 | メディア問題  

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