利尿剤 スピロノラクトンが消化性潰瘍や出血と関連? 追補


SSRIと消化管出血の関係で、MR活動に関し苦々しい経験をもつ。
(文献提示しても、新たな情報を提示するどころから、真っ向から否定したMR及び会社の存在は、MRそのものの存在意義さえ否定される)

MRへの製薬会社の教育というのは、メリット提示第一で、副作用に関する問い合わせに関してはきわめて不誠実な対応しかとれない一部上場一流会社もある。ましてや、後発品のみの会社は、かなり不誠実で、先発製薬会社に聞いてくれとのたまう会社も多い。

(利尿剤 スピロノラクトンが消化性潰瘍や出血と関連?)の追補
製薬会社からみて、このスピロノラクトンという一錠二五円、後発会社に至っては六.四円の商品に対してどれほど真剣に副作用情報の対応をするだろうか?

Spironolactone and risk of upper gastrointestinal events: population based case-control study
BMJ 2006;333:330 (12 August)
アルドステロンは、心臓やその他の器官においても糖質コルチコステロイド受容体と結合し、線維組織の形成促進的に働く。
その働きhydroxysteroid dehydrogenaseによりmodulateされる(Mol Cell Biochem. 1998 Dec;189(1-2):47-54.)。
糖質コルチコステロイド様活性物質の場合組織修復促進することもあるが、スピロノラクトンは線維様組織修復を抑制する。この抑制が心不全や動脈性の高血圧には有効だが、胃や、十二指腸では逆にデメリットとなる可能性がある。
胃や一部十二指腸に糖質コルチコステロイド受容体が存在し、繊維組織形成においてhydroxysteroid dehydrogenase酵素はおそらく重要な役割を果たしている。
このように、スピロノラクトンのようなアルドステロン受容体拮抗剤は、胃十二指腸びらんの治癒阻害的に働き潰瘍形成に関与するという考察がなりたつ。

上部消化管出血・潰瘍の頻度は良好な治療のため減少しているが、まだそのための入院も多い。
一般的なリスク要因は、年齢、既往、喫煙、アルコール誤用、ヘリコバクター・ピロリ感染、NSAIDs、コルチコステロイド、抗凝固剤、SSRIなどが知られている。

スピロノラクトンと上部消化管出血・潰瘍の相関の可能性がケースレポートとして報告されている。
潰瘍治癒阻害的に働くという報告もある。

イギリスではスピロノラクトンとcarbenoxolone(アルドステロン作用を有する胃腸薬)との併用がなされているとのことで、その併用により治癒遷延化するのではないかという考えもあるが、ループ利尿剤との併用では阻害されない。
潰瘍治癒は、カリウム保持性利尿剤であるamilorideにcarbexolone加えたときに潰瘍治癒が遷延化される。


スピロノラクトン処方されている患者では胃潰瘍や上部消化管出血のリスク増加
Verhammeらは、523名の胃十二指腸潰瘍や上部消化管出血を対照5230にて比較したところ、胃腸イベント2.7倍のリスク増加と関連していることが判明
スピロノラクトンと潰瘍治療薬処方の用量依存性関係も報告されている。

by internalmedicine | 2006-08-11 12:20 | 消化器  

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