低テストステロン状態は死亡リスクが高い
2006年 08月 15日
これまでも、低テストステロン&性腺機能低下を生じ、死亡リスクを増加させる(J Am Geriatr Soc. 2004 Dec;52(12):2077-81)という報告有り
今回、Arch Intern Med. 2006;166:1660-1665. に同様な報告
あくまで、後顧的研究であり、原因・結果に関する他の要因も関与の可能性あり
血中テストステロン値は加齢男性で低く、筋量減少・骨塩減少と関連し、adiposity増加、インスリン抵抗性増加と関連する。Shoresらは、40歳以上のテストステロン低値、正常にて、全原因死亡率をCox比例ハザードモデルにて検討。8年のフォローアップにて、正常テストステロン群に比べ、低テストステロン群は、年齢・合併症や他の寄与因子補正後も88%ほど死亡リスクが高い。急性疾患の影響、年の死亡を除外するなど検討を加えると、低テストステロン群は有意に死亡リスク増加と関与。
もともと、hypogonadal older menに関してうつ増加(1: Arch Gen Psychiatry. 2004 Feb;61(2):162-7.)など、死亡率に寄与する状態も示唆されていた。
以下のメモ:
加齢における性腺機能低下症、40-70歳で、USでは350万人の男性、2010人に540万人に増加
勃起障害、射精障害、血中のテストステロンが50歳以上で減少、筋力・量の低下、中心性脂肪増加
血中総テストステロン<200 ng/dl(r/o >400 ng/dl)
LH、FSH、Prolactin測定を
うつと関連
治療前には必ず、PSA、血液検査を
(http://www.fpnotebook.com/URO3.htm)
治療に関しては、男性更年期のアンドロゲン補充療法・・・・エビデンス無し、リスク可能性大のところで述べたが、補充療法を考慮する場合、hypogonadismの診断とモニタリングが必要であると述べられている。・・・安易な治療だけは慎んでいただきたい。
外傷や疾患による視床下部下垂体機能低下による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(HH: hypogonadotropic hypogonadism)男性は、テストステロンとゴナドトロピンの関係に於いて、下垂体・性腺ホルモン系のネガティブ・フィードバックが維持されている。 低(<0.5 IU/L)、中間(0.5-2 IU/L)、高値(>2 IU/L)とカテゴライズされ、高FSHやLH値は正常のゴナドトロピン状態になることがないといえる。故に、適切なアンドロジェン補充評価のための、ゴナドトロピン値測定はテストステロン測定とともに有用であることが示される(Journal of Andrology, Vol. 27, No. 3, May/June 2006)。
テストステロン補充療法の是非・・・に詳細が書かれている。
テストステロン補充療法の問題点・・・前立腺癌・多血症、睡眠時無呼吸、皮膚のにきびなど
“加齢男性でのテストステロン減少”が“実年というべき人生の実り多い時期のQOLあるいはADLを損なう病態”なのかどうか
そして、“テストステロン代謝を中心とする”治療が果たして有効なのか、安全なのか、また、安易なラベリングで鑑別すべき疾患を見落としてしまう傾向にあるのではないのかといろいろ心配になってくる。
特に、加齢男性における、hypergonadotropic hypogonadismのうちpartial androgendeficiency (PADAM)と二次性のhypogonadismの鑑別は困難
GnRH測定有効との報告もある(J Clin Endocrinol Metab. 2005 Mar;90(3):1280-6.)
ref.)
Kallmann's syndrome (idiopathic hypogonadotropic hypogonadism and anosmia:http://content.nejm.org/cgi/content/full/336/6/410)
by internalmedicine | 2006-08-15 11:39 | 医療一般