TGN1412治験:被験者重体事件

[ 第Ⅰ相モノクローナル抗体試験で患者6名が重体 ](2006-03-15 14:29:11-0400(ロイターヘルス)発)で、報道された、第1相治験の詳細報告論文がNEJM速報(www.nejm.org August 14, 2006 (10.1056/NEJMoa063842) )に掲載されている。


この”事件”は、極端な薬害市民グループにより政治利用されつつある側面もあるようだが、商業主義的な面も否定できないだろう。

的外れかもしれないが、こういう第1相試験を一挙に行うのは考えものでシークエンシャルに施行すべきだったのでは?


T細胞は、通常の活性化のためには、signal 1(antigen receptor)とsignal 2(co-stimulation)を必要とする。superagonist活性はsignal 1を必要とせず、T細胞を完全に活性化。これはC"D loop(J Exp Med. 2003 Apr 21;197(8):955-66.)と呼ばれるCD28の特定の部分に結合するものである。免疫系への刺激を行う、superagonist活性という抗体の存在はT細胞刺激として治療上期待されていた。


以下、NEJMの速報から、知識不足のため誤訳だらけだろうが・・・参考のため概訳をこころみた・・


8名の健康男性ボランティアにて二重盲験ランダムプラセボ対照研究、TGN1412(TeGenero)の安全性研究、新規のモノクローナル抗体
ヒトに対するsuperagonistである 抗-CD28モノクローナル抗体(IgG4κサブクラス)で、T細胞受容体のリガンドと独立してT細胞刺激

臨床前モデルでは、TGN1412によるCD28の刺激が、type2 ヘルパーT細胞、特にCD4+CD25+ regulatory T 細胞を活性化し、一過性のリンパ球増加をもたらし、毒性・前炎症性効果を検出できなかった。
トライアルでは6名でTGN1412、2名でプラセボ

薬剤注射90分以内に、6名全員が全身炎症性反応、proinflammatory cytokineによる症状、筋痛、吐き気、下痢、発赤、血管拡張、低血圧を生じた。
注射12時間~16時間以内に、重症となり、肺浸潤、肺障害、腎不全、汎血管凝固亢進となった。
24時間以内に、重篤な予想外のリンパ球・単球減少を生じた。
6名全例がICUへ運ばれ、透析を含む心肺維持装置、高用量のメチルプレドニゾロン、抗IL2受容体拮抗抗体の投与を受けた

2名の患者で心血管系ショック遷延、ARDSへ進展、8-16日集中的臓器サポート必要であった。

multiple cytokine-release syndromeの証拠にかかわらず、6名全例生存。
病原性、エンドトキシン、基礎疾患などのコンタミネーションは認めなかった。

CD28の経路を介したT細胞のcostimulationにおいて、正常では肺胞マクロファージは十分な効果的でない。しかし、今回、in vivoにて抗CD28アゴニストは免疫活動性を促進し、肺障害を生じた。TGN1212の臨床前データではcytokine stomrも肺障害も見られなかった。このことは前炎症性サイトカイン高値には肺の構成成分が必要であることを示している。

SIRSへの進展せしめる肺構成成分に対して、肺組織の抗体とサイトカインの直接影響の組み合わせによるものでより急激な肺障害を生じたのであろう。

敗血症により、B細胞とCD4+細胞選択的なリンパ球減少を生じる。だが、TGN1412注入後の8時間内のリンパ球減少は、全ての単核球細胞(CD4+、CD8+、単球)であり、サイトカインストーム単独というより注入したT細胞アゴニストの反応と考えるべきである。




(http://hobab.fc2web.com/image20058044.gif)


(http://www.rs.noda.sut.ac.jp/~immunol/fig2.gif)

by internalmedicine | 2006-08-17 08:42 | 医療一般

 

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