2型糖尿病高血糖マネージメント:治療開始・補正コンセンサスアルゴリズム
2006年 08月 29日
乳酸アシドーシスは、1000人年あたり0.06程度で、頻度としては少ないが、その恐ろしさが、metformin使用を制限しているようである。
(Journal of the American Board of Family Practice)
乳酸アシドーシスはuncommonだが重大な副作用。臨床的な所見として、症状・兆候はケースにより様々で非特異的、吐き気、嘔吐、意識変容、易疲労感、腹痛、口渇などを訴える。重篤な、生命危機に至る場合は透析によって急激に除去しうる。血中重炭酸の低下、アニオンギャップの増加、乳酸値の増加、anion-gap metabolic acidosisと知られている所見を示す。メトフォルミン中止後症状とともに検査所見も改善するのが通常。
乳酸アシドーシスを生じる正確なメカニズムは不明、pyruvate dehydrogenase活性の現象、ミトコンドリアへの運搬減少など考慮されている。インスリン減少下で嫌気的代謝へシフトし、Krebsサイクルのprecursor産生増加の結果好気的代謝経路の減少を生じる。小腸でのブドウ糖利用増加により理論的に門脈系の乳酸値増加を生じるなど
アメリカ糖尿病協会ステートメント:Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes: A Consensus Algorithm for the Initiation and Adjustment of Therapy Diabetes Care 29:1963-1972, 2006では、初期からライフスタイル介入とともに、metformin導入が推奨されている。詳細は、原文をご参考にしていただきたい。
・できるかぎりHbA1c 6%未満へ、最低7%以下へというゴール
特定の患者にとってこのゴールそのものも適切でなく、実際的でない。各患者に応じた臨床的判断、benefitとリスクを元に、ニーズをふまえて設定すべきである。生命予後・低血糖リスクを考慮して、強化療法以前にこのことをふまえるべきである。"
"addition of medications is the rule, not the exception, if treatment goals are to be met over time."
患者はもちろん糖尿病ケアのキープレイヤーであり、訓練と強化が必要である。ほとんどではないが、多くの患者で、併用療法が必要となるよう進行することがある。目標範囲で血糖を維持するには時間がかかる。
具体的には、食事療法&薬物→インスリン追加
【Step 1】ライフスタイル介入とmetformin
診断時にはライフスタイル介入とともにmetformin治療を開始すべきである
metforminに禁忌がない限り高血糖に有効で、体重増加・低血糖が無く、副作用が一般的に少なく、耐用性が高く、低コストである。
1-2ヶ月最大の効果を現すよう開始すべきで、自覚症状を有する高血糖が持続するなら他の血糖降下剤を追加すべきである。
【Step 2】追加薬物療法
ライフスタイル介入+最大耐用量のmetforminにて血糖目標に至らない場合、2-3ヶ月以内に他の薬剤を考慮すべきである。追加薬剤としては、インスリン・SU剤、TZD意外に強いコンセンサスを持つものはない。A1c>8.5%、もしくは高血糖による症状がある場合、より強力な血糖低下薬剤、インスリンを考慮する。インスリンはbasal insulin(intermediate- or long-acting)で開始する。
【Step 3】更なる補正
ライフスタイル介入、メトフォルミン、さらに追加治療で血糖目標に到達しない場合、インスリン治療を開始するか、強化する。
α1GIは、“They are less effective in lowering glycemia than metformin or the sulfonylureas, reducing A1C by 0.5–0.8 percentage points ”・・・と書かれ、評価が低いのは最近の傾向のようである。
糖尿病とライフスタイル介入
・The Look AHEAD Research
by internalmedicine | 2006-08-29 09:55 | 動脈硬化/循環器