新しい分泌系?:A Critical New Pathway for Toxin Secretion?



NEJMのレビュー(A Critical New Pathway for Toxin Secretion? NEJM Volume 355:1171-1172 September 14, 2006
殺アメーバ能力を持たないコレラ・ビブリオで、virulence-associated secretion(VAS)遺伝子、今までのtype I~Vとして知られている分泌型とは異なる新しい蛋白分泌システムをencodeしている遺伝子クラスターを見出した。

V52というコレラ菌種ではコレラ毒素遺伝子が欠如しているが、コレラ様症状と下痢以外の症状が生じた・・この現象のメカニズムは不明であった。Pukatzkiらは、アメーバを用いた感染系で、バクテリア・マクロファージ相互作用モデルとして用いて、6番目のトキシン分泌経路を証明した・・・という話で、レビュー。


シグナルペプチドがない、細菌の細胞膜(グラム陰性菌では内膜)、葉緑体のチラコイド膜、真核細胞の小胞体膜には、プレタンパク質をSecYEGあるいはそのホモログが形成するトランスロコンチャネルを通じてタンパク質を膜透過させる、いわゆるSec分泌系がある。翻訳後に類似の膜貫通メカニズムによりATPのエネルギーを用いて小胞体内腔へ輸送される必要があるのである。有核細胞にみられる、翻訳が開始されるとリボソームが粗面小胞体に結合し、このタンパク質は翻訳されながらSec61複合体というチャンネルを通して小胞体内腔に輸送されるシステムがないためである。
グラム陰性菌の細胞表層は複雑で、内膜のほかに外膜があり、その間にペプチドグリカン層が存在するペリプラズムとよばれる空間がある多層構造になっている。そのため、病原因子などを菌体外に放出したり、宿主細胞に移行させる装置として、Sec分泌系と共同して、あるいはそれとは独立して働く分泌機構が存在し、IからIVのタイプに分類される(Type I~IV分泌系



・タイプI分泌系は、Sec分泌系に依存しない分泌系、孔形成毒素(pore-forming toxin)は、通常、type I 分泌系によって細胞外へ分泌される。

・タイプII分泌系は、Sec分泌系でペリプラズムに運ばれたタンパク質を細胞外に放出する分泌系、膜内への輸送・外部膜への輸送する2段階

・タイプIII分泌系は、タイプI分泌系と同様にSec分泌系に依存しない

・タイプIV分泌系は、タイプIII分泌系と同様に、様々な毒性因子(タンパク質やタンパク質-DNA複合体)を分泌したり、細胞から細胞へ直接伝達する機構

・type V分泌系はtype IIのminor variation

type IもtypeIIもトキシンの宿主細胞への標的をしぼる働きはもたない。
対して、それ以外のtype IIIとVIなどはトキシン分泌と標的化をともなうもの。

[ type I, II, III, and IV protein secretion systems]

Microbiology and Molecular Biology Reviews, December 2004, p. 692-744, Vol. 68, No. 4


新しい分泌系?:A Critical New Pathway for Toxin Secretion?_a0007242_15293960.jpg






VAS遺伝子はグラム陰性菌の多く見られ、嚢胞性線維症の緑膿菌におけるビルレンス、それから、慢性下気道感染における緑膿菌の病態説明に関して重要な役割を果たす予感・・・

by internalmedicine | 2006-09-19 11:17 | 感染症  

<< マスク酸素投与感染の可能性 ゴミが混じり・効果・安定供給に... >>