口臭:臨床的レビュー

内科医も時に口臭に関して質問されることがある。・・・専門外ですなんていうと怒られそうなので、レビューを勉強してみた。H.pylori除菌を賢明に推奨している方々がいるが、Evidenceとしてはまだ不明であるので、注意願いたい。


Clinical review Oral malodour (halitosis)
BMJ VOLUME 333 23 SEPTEMBER 2006
(原因)口臭は一過性には多くの人が存在し、8-50%が繰り返し経験しているcommonな病態である。食物残渣と歯・舌の細菌プラークが主な原因であり、口腔衛生の不備、歯周炎・歯肉炎などの炎症によるものと考えられる。いづれにせよ口腔内が原因のことがほとんどであるとのこと。

他の原因として、一過性の睡眠後・時に“morning halitosis”と呼ばれる時がある、これは鼻閉塞、特に上気道感染、特に暑く乾燥した空気下での睡眠で生じるもの

食事性のガーリック、オニオン、スパイス、特にドリアンが最悪で、数時間続く。
タバコ・アルコールはbetel nutなどの臭いが特に続く

気道感染、鼻・鼻腔、扁桃腺、扁桃結石、鼻腔異物、気管支拡張、肺の感染症、気道閉塞なども生じる

全身性疾患はまれであるが、存在する。H.pylori感染も示唆されている。

薬剤でも生じる。

Fish odour syndrome (trimethylaminuria) なども存在する。

だが、客観的に確たる口臭の存在しない、"self oral malodour, halitophobia”と呼ばれ、妄想の一型や単一症状の心気症の事がある。洗口剤、水歯磨きやスプレーを多用、歯磨き・舌磨きに賢明になり、ガムやミントを常にかむようになる。


(治療)口腔衛生が十分でもまだ続く場合は舌に原因があることがあり、tongue cleningが適応となる。
ただ、tongue scrapingは長期間の口臭減少効果に関してエビデンスが限られている。
チューイングガムは一過性の効果のみ

細菌量を減らし、口臭成分を減らす働きをすることを示唆するも、有効性を示すRCTが少ない。
chlorhexidine gluconateは揮発性硫黄成分を産生する細菌を減らし、洗口剤やスプレーは口腔衛生だけの時よりも数時間口臭を押さえる効果がある。
chlorhexidine/cetypyridinium chlorideと乳酸亜鉛を含む洗口座位は口臭を減らす。
しかしながら、長期間chlorhexidineを使うとコストも馬鹿にならないし、口腔粘膜への灼熱感を生じ、色素沈着を生じるという副作用を有する。
二相油・水洗口は数時間口臭を減らす。
cetylpyridinium chloride、chlorine dioxide、塩化亜鉛を含む洗口液は数時間継続する
Tricosanは揮発性硫黄成分に直接作用を持ち、抗菌作用を有する。洗口や歯磨き用に用いられるが、おそらく口臭を減少させるだろう。


【臨床的評価】
Subjective
. 強度:官能的測定法(organoleptic method): 口・鼻と別々の排気で臭いをかぐ、やりかたは簡単で、トレーニングは必要ない
. 定量化:hedonic method:これは臨床的に適応しにくい、トレーニングが必要

Objective
.モニターにて 硫化物を同定すれば簡単、だが、それ以外の原因物質ということもある
(市販の口臭測定器はこれが多いようである)
. ガスクロマトグラフィー:臨床的ルーチンには使えない。
. 細菌同定(たとえば、benzoyl-arginine-naphthylamide test、PCR、暗視顕微鏡):臨床的に不適切

【治療】
. 官能的測定により、口・鼻同時に検知された場合、非口腔内の原因を探り、マネージする
. 専門家・患者自身による歯磨きによる口腔衛生
. 定期的な治療的なクリーニング
. 定期的な抗菌的歯磨き・マウスウォッシュなど
. Chlorhexidine gluconate
. Cetylpyridinium (not available in UK)
. Oil-water rinse
. Triclosan/co-polymer/sodium fluoride toothpaste
. 口腔内衛生が維持できるか定期的に臨床的にレビューすること
. 臨床心理士への紹介


【原因(common)】
口腔内
. 食片圧入(食物が歯にはさまる):Food impaction
. 急性壊死性潰瘍性歯周炎:Acute necrotising ulcerative gingivitis
. 急性歯周炎:Acute gingivitis
. 成人・進行性歯周炎:Adult and aggressive periodontitis
. 歯周炎(参考)
. Dry socket:感染(抜歯)窩、歯槽骨炎など
. 口腔乾燥症
. 口腔潰瘍形成
. 口腔内悪性疾患

呼吸器系
. 異物
. 副鼻腔炎
. 扁桃腺炎
. 悪性疾患
. 気管支拡張症



揮発性食品
. ガーリック
. タマネギ
. スパイスのきいた食品


Possible systemic causes of oral malodour

【全身性疾患】
. 急性熱性疾患
. 呼吸器感染(通常上気道)
. Helicobacter pylori 感染 (?)
. 咽頭-食道憩室
. GERD
. 幽門狭窄・十二指腸閉塞
. 肝不全 (肝性口臭:fetor hepaticus)
. 腎不全 (end stage)
. 糖尿病性ケトアシドーシス
. 白血病
. トリメチルアミン尿症(Trimethylaminuria)
. 高メチオニン血症(Hypermethioninaemia)
. 月経 (menstrual breath)

【物質・薬剤の例】
. アルコール
. タバコ
. Betel(ベテル・チューイングのことか?)
. 溶剤乱用(Solvent misuse)
. 抱水クロラール
. 亜硝酸塩、硝酸塩
. ジメチル・スルホキシド(DMSO)
. Disulphiram
. 特定の細胞毒性薬
. フェノチアジン系
. アンフェタミン類


【口臭を生じる成分】
Volatile sulphur compounds
. Methyl mercaptan
. Hydrogen sulphide
. Dimethyl sulphide
Diamines
. Putrescine
. Cadaverine
Short chain fatty acids
. Butyric acid
. Valeric acid
. Propionic acid

by internalmedicine | 2006-09-22 11:46 | 消化器  

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