腹囲測定の標準化
2006年 10月 10日
1998年:World Health Organization (WHO):Diabet Med 1998; 15:539-53.
2001年:National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III in 2001 (NCEP ATP III):NCEP-III (PDF)
などに記載がある。ただ、WHOクライテリアは中心性肥満(W/H比による定義)と肥満全体(BMIによる定義)を考え、NCEPクライテリアは中心性肥満(ウェスト径定義)という特徴があった。WHOクライテリアは糖代謝異常を含む。2型糖尿病、空腹時血糖異常、高TG、低HDLなどを含むものであり、もともと疾患の定義があいまいなのである。
そんな中、内臓脂肪量の簡易な測定方法として、腹囲がクローズアップされてきたわけだが・・・日本のメタボリックシンドローム基準のうちの腹囲測定の原点は腹部CT測定からの推定とされる。だとしたら、CT時に安静呼気位にて計測されているのだろうかという疑念があった。
腹囲測定は大きく2種類あるようである。厚労省などが推奨している臍部レベル測定と、腹部中央測定方法である。この二者、腹囲測定による方法論の差が生じているとの発表がある。
日本人のウェスト径カットオフ値を提言した論文(Diabetes Care 29:1123-1124, 2006)
日本人でのメタボリックシンドローム診断における適切なウェスト径のカットオフ値
①男性85cm、女性78cm:最大感度・特異度
②男性83cm、女性73cm:multiple risk factorの予測感度として80%を満たす
この結果は、IDFで提案されたものよりウェスト径が少ない結果となり、女性で特に著明。これは方法の違いの問題であり、IDF提案では臍部で測定し、この検討では腹部中央にて測定である。男性では両者間でさほど差がないが、女性では臍部レベルのウェスト径は腹部中央測定より数cm長い結果となっている。
<厚労省ウェブ記載の腹囲測定方法>
メタボリックシンドロームの診断基準に基づき、立位、軽呼気時、臍レベルで測定する。
脂肪蓄積が著明で臍が下方に偏位している場合は肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
(厚労省ウェブ記載)
標準化に関する記載
http://www.metabolic-syndrome-institute.org/medical_information/screening_diagnosis
腹への張力をコントロールするために弾性を有するテープ(e.g. Gulick model)が好ましい。
非伸縮性テープを用いる場合は、目盛りのついてない3-5cmほどの端っこをつかんで測定すること。
肩幅に足を開きたたせる。腕は体の両側に垂らすが、測定時に楽なように30度開く。
もしこれで安静が保てない場合は、楽な姿勢を保ちながら、腕を交差させる。
テープに軽度張力をかけて、測定を行う。
通常の呼気終末で測定。被験者が腹部筋肉を収縮しないように励ます。
検査側は、もし腹筋収縮の互いがあるなら会話を行うなどしてみる。
測定は2回行い、もしその違いが5%(±1cm)以上なら3回目を測定する。もっとも近い2つの測定値を平均化する。
1. 左右の最下端肋骨に記しをつける
2. 左右腸骨稜にマーク
3. この2つのマークの中間を鉛筆でマーク
4. 中間点を結び水平にテープを置く(鏡を使うと役立つ)
5. 測定時軽度張度をテープにかける。

・最小腹囲径
・上述の方法
・臍周囲計測
ばらつきがあることが分かるだろう・・・
日本でも国際的な基準に統一すべきだと思う。
欧米の科学的エビデンスの利用困難となると思われ、結果的には日本国民にとっての損失となろう。男女の腹囲基準の逆転は日本くらいであり、説明困難であったわけで、統一基準での男女基準の再定義を急ぐべきであろう。
by internalmedicine | 2006-10-10 12:13 | 動脈硬化/循環器