健康な子供へのカルシウム補給は骨密度是正に効果なし
2006年 10月 13日
British Journal of Nutrition, Volume 74, Number 1, July 1995, pp. 125-139(15)
Am J Dis Child, Jun 1991; 145: 631 - 634.
“子供の身長を伸ばすために・・・”とか“小児期に牛乳を飲まなかった人は骨量が少ないというデータ”で骨折と結びつける話がちまたにあふれている。しかし、いづれもエビデンスという面では眉につばをつけざる得ないことが多い。
骨粗鬆症は大きな公衆衛生問題であり、特に女性では深刻である。骨密度低下は骨粗鬆症性の骨折の重大なリスク要因である。閉経後の骨密度は骨量ピーク時の機能に依存し、その後の骨密度低下速度にも影響を与える。このことは高齢時の骨折のリスク要因とつながる可能性がある。小児期の最大骨量を改善するような介入、食事や身体運動などの生活習慣の改善は加齢に伴う骨塩量減少を予防する可能性がある。
カルシウムサプリメントの臨床的トライアルや乳製品は骨密度を小児期においても増加させる。しかし、その増加分を維持することはできない(Nutr Rev. 2000 Sep;58(9):253-68.)。
ミルクや乳製品による"bone mineralization"のエビデンスはほとんどない。
(PEDIATRICS Vol. 115 No. 3 March 2005, pp. 736-743)
BMJの論文は、カルシウムサプリメントは健康な小児では骨密度に影響をあたえないと述べられている。
Effects of calcium supplementation on bone density in healthy children: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ 2006;333:775 (14 October)
Effect of calcium supplementation on total body bone mineral content at the end of trial (SMD=standarised mean difference)
これだけだと、有意差があって良いではないかという話になるが・・・
カルシウム補給は骨密度の軽度の効果しか与えず、しかも部位は上肢に関してのみであり、しかもその効果は対照群の1.7%増加したに過ぎないのである。こんな結果が骨折リスク減少に寄与するとは思えない。
大腿骨頚部、腰椎などの骨折の生じやすい場所での効果はなかったことが判明した。
行政が関与した健康教室などの資料・パンフを時に見聞きすることがあるが、
“骨を丈夫にするためにカルシウムを!”などと表層的なアピールが目立つ。
この国の健康指導者ってのは自分たちの指導内容に疑問を持つことはないのだろうか?
・・・新しい情報を処理する能力を有しないのだろうか?
by internalmedicine | 2006-10-13 15:07 | 運動系