基礎疾患老人患者では気道感染予防効果:インフルエンザ・ワクチン懐疑的


軽度から中等度のインフルエンザ流行において、65才以上の健康住民において下気道感染発症リスクを減少するようであるが、基礎疾患を持つ住民での利益は証拠として見いだされなかったという研究結果。


インフルエンザワクチンは、老人の気道疾患による入院数減少と関連するが、呼吸器感染症の重症度全般への影響はあまり知られてない。
老人住民個々の、毎年の下気道感染(LRTIs)の頻度を調査
オランダの1996-2002年、住民コホート研究
26071名の対象で、3412名がLRTIs発症
インフルエンザ流行期、1回のワクチンではLRTIリスク減少なかった。
住民全体では、1回目のワクチン後のハザード比は0.86(95%CI 0.71-1.05)
合併症なしの場合、0.90(95%CI 0.56-1.45)、ある場合、0.83(95%CI 0.66-1.04)
合併症なしの個人では、流行後期、再ワクチンは33%(95%CI 8-52%)減少
合併症ありの患者では、このリスク減少は5%で有意ではなかった(95%CI -10% ~ 18%)


Arch Intern Med. 2006;166:1980-1985.


同じオランダの研究:
ワクチン接種住民においてインフルエンザ感染減少(RR, 0.48; 95% CI, 0.26-0.91)
合併症ありの老人の死亡率有意に減少(RR, 0.67; 95% CI, 0.48-0.94)

Arch Intern Med. 2003;163:1089-1094.


以下の報告は気道感染への効果示唆
75歳超の24535名の老人対象では、ワクチン未接種者の全原因死亡率はインフルエンザ流行指数と相関 (死亡率:1.16 95%CI 1.04-1.29 90パーセンタイル.)この相関は呼吸器系疾患死亡と強い相関だが、心血管死亡とも関連。
対照的に、ワクチン接種群はインフルエンザ流行と相関なし
BMJ 2004;329:660



無数の観察研究で、老人のインフルエンザ流行期における、インフルエンザワクチンの死亡・入院リスクへ減少が報告されている。(e.g. Annals of Internal Medicine, October 1995 Volume 123 Issue 7 Pages 518-527)

ワクチン接種者と未接種者の基礎的健康状態により影響を受ける。ワクチンの予防効果はインフルエンザシーズンに特異的であるべきなので、非インフルエンザ時期の評価はインフルエンザ時期に見られるバイアスの可能性を示唆することとなる。非接種者に対するワクチン接種者の相対死亡リスクはインフルエンザシーズン前0.39(95%CI 0.33-0.47)、シーズン中 0.56(95%CI 0.52-0.61)、シーズン後 0.74(0.67-0.80)
肺炎入院相対リスクはシーズン前 0.72(0.59-0.89)、シーズン中 0.82(0.75-0.89)、シーズン後 0.95(0.85-1.07)
診断コート補正にてこのバイアスはコントロールできず、インフルエンザシーズン前のバイアスはインフルエンザシーズンにおける相関を説明できるものである
International Journal of Epidemiology 2006 35(2):337-344




老人では基礎疾患のある患者の気道感染予防効果がワクチンにおいて懐疑的であるというのは、ショッキングである。

いずれにせよ、こういった研究では、バイアスに関して十分な考慮が必要である。

by internalmedicine | 2006-10-17 10:50 | 呼吸器系  

<< 過敏性腸症候群の抗生剤治療 たばこと慢性膵炎 >>