卒中直後のコーチゾル値高値は予後不良    重症患者は副腎漬け?

副腎皮質ホルモン、いわゆる、ステロイドをたくさん使用しまくることを“副腎漬け”といいますが・・・

卒中後早期のコーチゾル値は予後を推定!
Low and high circulating cortisol levels predict mortality and cognitive dysfunction early after stroke. J Intern Med 2004; 256: 15–21.
Journal of Internal Medicine
高コーチゾル値は卒中後のconfusionや悪いアウトカムを意味する。Dehydroepiandrosterone sulphate (DS)、もっとも量の多い副腎のandrogenであるが、糖質コルチコイドとして作用。これらのステロイドの変化により無数の脳機能、ニューロンの生存を含めた変化があるのではないか・・・この研究の目的は、血中コルチゾールとDSの値、コルチゾール/DS比を卒中後早期に検討してdisorientationと死亡率を検討
急性の虚血性卒中(n=88、56名男性、32名女性)

【結果】
対照群と比較した第1病日での血中コルチゾールの差はない。
急性のdisoriented ptはoriented ptに比較して初回コーチゾル値は有意に高い。(P < 0.05).
第1病日でのコーチゾル値は28日目の独立した予後因子であり、低コーチゾル値 (<270 nmol L-1)・高コーチゾル値 (>550 nmol L-1) の患者はともに1年後の生存率が低い。

第一病日のDS値有意に卒中患者で増加

【結論】高コーチゾル値は虚血性卒中早期で認知機能障害と相関。高・低循環中のコーチゾル値は卒中後の死亡率増加と相関。DS値は臨床的アウトカムと相関無し。


いわゆる、critical ill patientのひとつだと思いますが、卒中後の副腎ホルモンの状態というのはニューロンの保持といういみで興味深いです。
視床下部・下垂体・副腎軸から考えるべきなのか・・・・合目的的なためコーチゾル値が高くなったのか?

副腎ホルモンの分泌という状況なのか、甲状腺のSick-euthyroid syndromeようなクリアランスの問題なのか?




最近、NEJM以降、重症患者における副腎不全のoverdiagnosisを問題にする傾向がでて来ました。逆に、underdiagnosisという以前からの主張と・・・


“もっとも重症患者における副腎不全の診断の難しさ”
Adrenal Insufficiency in Critically Ill Patients
http://harrisons.accessmedicine.com/server-java/Arknoid/amed/harrisons/ex_updates/updt3785_p01.html
重症の状態では無数の内分泌的変化がみられる。外傷ストレスはしばしば栄養不良と関連。異化の一連の動きで、エネルギー源が創傷治癒のために使われ、血糖を維持するよう誘導する。生殖システムは極度のストレス・栄養不良により抑制。2次性の無月経として知られる。“Sick-euthyroid syndrome”は遊離ホルモンは比較的保たれるのに、血中総T4、T3が極度に減少する


(Harrisonsonlineから)
“Sick-euthyroid syndrome”(SES)の最も多いパターンは総T3・遊離T3低下、正常のT4、TSHである。T3の低下は重症度に相関。T4→T3の変換が末梢の脱ヨード化の阻害され、rT3が増加する。しかし、産生増加でなくクリアランス減少がrT3の増加の原因とされる。また、T4は代謝され硫酸化T3になる経路もある。一般的に気が次の正常のひとでもみられる、低T3状態は、ある種の適応状態とされる。目的論的に言えばT3の低下は異化を制限するメカニズムともとれる



ストレスはまた副腎から、髄質からのカテコラミン遊離、皮質からの糖質コルチコイドを刺激する。副腎不全の可能性はICUでしばしばみられる、特に低血圧や昇圧剤反応しない場合にである。しかし、標準クライテリア(cosyntropin刺激後 >18.5g/dlなどの基準)を用いた診断の信頼性を確立させようと試みがなされている
まず、内因性ACTH高値はすでにコーチゾル産生を刺激している所見であり、18.5g/dlとい閾値が適切かどうかの疑問点となる。2番目に多くのICU患者は血中コルチゾール結合蛋白(CBG:cortisol binding globulin、アルブミン)が変化しており、循環中のコルチゾールの90%異常が正常では結合している。遊離糖質コルチゾールは生化学的に有用であり、組織糖質コルチコイド受容体を刺激できる能力をもつが、遊離コルチゾル濃度は生理学的に測定されるものであり、一般に広く利用できるものではない。


  参考URL
最近、Hamrahianらは、血中の総コルチゾルと遊離コルチゾル濃度を66名の副腎機能障害のしられてない重症患者と33名の正常対照で測定、66名の患者のうち36名が低Na血漿(アルブミン濃度2.5g/dl以下)、30名が正常近似アルブミン濃度(2.5g/dl超)
ベースラインとcosyntropin刺激総コルチゾル濃度は正常近似アルブミン濃度患者に比べ低ナトリウムの患者で低かった。しかし、ベースラインの血中遊離コルチゾル濃度は2群でほぼ同様で対照群より数倍高かった。このことから糖質コルチコイド分泌は重症患者で極度に増加するが、その増加は総血中コルチゾル濃度測定だけの時は判別不能となる。
不要な糖質コルチコイド治療がすでに易感染である患者へ有害な合併症を生じるので重要な点である。
糖質コルチコイド治療が真の服腎不全患者の生命危機を救うのに役立つ一方で、過剰の糖質コルチコイド治療が創傷治癒を妨害したり、異化促進、一過性の糖尿病を誘発したり、免疫応答を抑制するなどの悪影響をおよぼす。
究極には、遊離コルチゾル分析で重症患者の生理的糖質コルチコイド反応で定義するしかない。
現実問題では、CBGやアルブミン不足の点で総コルチゾル測定することで臨床的判断をせねばならない。短期的な臨床治験が、副腎不全と合致した臨床所見、生化学所見のときになされている。




逆の主張もあります。
ADRENAL INSUFFICIENCY: UNDERDIAGNOSED IN THE CRITICALLY ILL

by internalmedicine | 2004-06-15 12:25 | 内科全般  

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