アンチエージング:DHEAやテストステロン投与の効果なし
2006年 10月 19日
男性更年期という怪しげな疾患に関しても補充療法は否定的な現状
そんな中、医療でない、健常であることが前提の老人への長期ランダムトライアルが行われ、DHEA or 低用量テストステロンに関してQOLや身体的パフォーマンスへのbenefitは証明できなかったらしい。
DHEA in Elderly Women and DHEA or Testosterone in Elderly Men
NEJM 355:1647-1659
年齢とともにDHEAやテストステロン値は低下、サプリメントとして加齢への可逆性効果があると主張する人々がいる。
この仮説を二重盲検、プラセボ対照、ランダム化トライアル(60歳以上の87名の男性、57名の女性)
ベースラインのDHEA-S、男性においてはbioavailable testosterone値を正常若年者の15パーセンタイル低下したレベル程度まで持って行く
男性:DHEA錠(75mg/日)、経皮テストステロンパッチ(5mg/日) or プラセボ
女性:DHEA錠(50mg/日) or プラセボ
2年間フォローアップ、active drugとプラセボの身体パフォーマンス(好気的運動能力、筋力)やQOL上の差がない
骨密度増加軽度あったが、男性の大腿頸部や女性の頭骨遠位のみの増加であった。
この違いは、bisphosphonateに見られるより小さい変化であった。
副作用の有意差は無かった。
60歳以上の人口比率の急激な増加とともに、加齢にともなうdisabilityを予防、遅らせることに注目が集まっている。ホルモン補充という方法が一つのアプローチとしてなされている。
dehydroepiandrosterone(DHEA)とその硫化物の血中濃度は30歳以降減少する。
![](http://www.estetik.com/datamed/images/image33.gif)
動物の知見として、DHEAの効果として体組成や糖尿病・心血管疾患への好影響が報告されている。このことはヒトの横断観察研究でも支持されている。さらに、健康ヒトおよび霊長類の寿命増加とDHEA比較的高値と相関しているという報告もある。こういった知見により、メディアによりDHEAのプロモーションがなされてきた。
しかし、齧歯類の知見をヒトへ適応するには疑問が残る。齧歯類は非常にDHEA濃度が低いさらに、文献において、ヒトでの知見は短期もしくは薬物学的使用量として用いた文献が多いという疑問があった。
今回の報告から、永遠なる若さへの探求は続くが、DHEAやテストステロン分泌を補充を行うことはその答えになりそうもないということが判明した。
エディトリアルには、“副腎不全患者でのDHEAの有効性のエビデンスからいえば、DHEAはサプリメントとしてもはや容認できないし、regulated drugとして認可されるべきものである。DHEAがサプリメントとして野放しにされている”と、苦言が呈されている。
Skeptic's Dictionaryの副腎皮質ホルモン DHEA
by internalmedicine | 2006-10-19 13:44 | 医療一般