重症患者の中心静脈圧異常推定は外頸静脈観察で十分?

昨今の医師バッシングのため、中心静脈カテーテル法で失敗もしくは結果的に偶発症を生じても、新聞沙汰・逮捕騒ぎ・医療訴訟とつながる。
この種の挿入失敗は20%にも及ぶとかかれているサイトがある。
以前調べたときには0.5%であったので、報告のばらつきが大きいようである。さらに、挿入は成功しても結果的にいろんなhazardを有する。動脈穿刺、血腫、気胸、血胸、乳糜胸水、頸動脈叢損傷、不整脈、空気塞栓、カテーテル位置異常などが直後の合併症。そして、カテーテルの閉塞、感染、血栓がらみ、動静脈瘻、血管・心臓損傷などは挿入時の合併症でないが、その後のカテーテル挿入後に生じるものである。

以下の論文をみると、重症患者において、その評価のための中心静脈圧測定というのはすたれていくのではないだろうか?ルート確保のために挿入している場合はもののついでなので測定されるのかもしれないだろうが(ただ、感染リスクが結構高い気もするが・・・)

Usefulness of the External Jugular Vein Examination in Detecting Abnormal Central Venous Pressure in Critically Ill Patients
Arch Intern Med. 2006;166:2132-2137.
【背景】Central venous pressure (CVP)は重症患者のマネージメントに関して重要な情報を提供する。外頸静脈(EJV)は内頚靜脈より観察しやすい。
【方法】異常CVP値同定のためのEJV測定の有用性に関して、CVPと比較して前向きの盲検研究を行ったもの
3つの臨床レベル、attending physician、レジデント・フェロー、インターン・医学部4年生で行わせ、CVP推定(5cm水柱以下か、10cm水柱以上か)を行ったもの
【結果】35名の患者に対する118の観察
CVPの範囲は2-20cm水柱
内頚靜脈より外頚静脈の方が視覚化しやすい(平均VAS 8 vs 5 P<.001)
CVP圧低値・高値判断の信頼性は優れており、
AUCにて、attending physicianにおいて、0.95(95%CI 0.88-1.00)、0.97(95%CI 0.92-1.00)、すべての観察者でも 0.86 (95% CI, 0.78-0.95) 、0.90 (95% CI, 0.84-0.96)
【結論】EJV測定は、カテーテル測定CVPと創刊誌、低・高CVP値の信頼すべき同定方
法と考えられる。



急性肺障害に関して、急性肺障害:肺動脈モニタリングvs中心静脈圧モニタリングとの比較の報告があった。そのエディトリアルに、
Clinical practice is rarely exclusively dichotomous
臨床の世界では白黒はっきりできることはむしろ稀
という言葉がある。
臨床を知らない人たちが、このことを忘れ、勧善懲悪、感情論的に騒ぎ立てているところに現在の医療の不幸がある。


【学生時代に戻って、復習】


Examination of the jugular venous pulse


a波:右房収縮時に生じる、外頸静脈へ伝わった右房圧により生じるもの、S1(音)発生時あるいは直前にピークに達し、心室駆出前(carotid pulse upstroke)前に生じる
右房拡張(弛緩)はa波の減少とともに始まり、c波により通常終了する。
右房トレーシングにて、c波は右室収縮の開始として認識され、おそらく、三尖弁の右室へのbulging、近接の内頚動脈拍動の伝搬により生じる。
外頸静脈圧のc波は一般的に臨床的に同定不能であり、外頸静脈記録によりはじめて認識される。
a波、c波に引き続き、下降波xは脈波の電波の遅れによる後期収縮期で生じる、陰性の波である。
右房の弛緩が下降波xの主なメカニズムである。右室駆出の間に、三尖弁の下方への変位が、右房圧の低下をもたらすことも関係している。
下降波xの終了がv波である。v波のメカニズムは右房・外頚静脈圧の増加、三尖弁がまだ閉鎖している間の心室収縮中の静脈系への血流流入により生じる。
v波のピークは左室収縮直後であり、ピーク圧が低下した後の内頚動脈の下降と通常同時。
v波の下行脚、y descentと呼ばれるが、これは三尖弁解放と右室への右房・静脈系からの血流急速流入により生じる。
y波初期は右房の急速充満期に生じ、右心系S3がy波のnadirに呼応する。
y波下降脚は急速充満期後の静脈系・右室への血液の流入の間に生じる。
頻拍の時には、v波とx波、y下降成分を分離するのは困難。一つの陽性、陰性波のみしか認識できないことも稀ならずある。
頸動脈洞マッサージにて心拍を遅くするために用い、観察することもある。心房細動時、外頸静脈は不整で、v,y波のみ評価される。
心房粗動の時は、粗動が観察されその拍数は動脈の拍回数より多い。



心音のS1に一致すればa波でありS2に一致すればv波である.頚静脈波ではa波とc波を分離することは不可能である.右室圧負荷では大きなa波がみられ、二峰性でa波とv波が同等に大きければ貧血、甲状腺機能亢進症、心房中隔欠損症といった右心系のhyperdynamic state が考えられる.TRでは、v波ではなくcv波であり二峰性にならないのが特徴である.CP、RCM、右室梗塞ではrapid Y descent が見られる.頚動脈の拍動との鑑別は、軽く頚部を圧すると静脈波は消失するが頚動脈の拍動は消失しないことにより鑑別できる.(http://www.kcn.ne.jp/~igakan/cardiol.htm)

by internalmedicine | 2006-10-24 09:51 | 動脈硬化/循環器  

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