「“原因”は病理によってのみ確定されるのであり、“疫学”によっては確定されないのである」

たばこ病訴訟判決に関して2004年のLancetの記事(The Lancet - Vol. 363, Issue 9423, 29 May 2004, Pages 1820-1824)をみたところ興味ある記載を見いだした。全国の疫学専門の先生方はこれを黙ってみていたのだろうか。

“要因は、可能性であり、原因でない”
【蟹沢成好 Japan Tobacco's primary expert witness Naruyoshi Kanisawa, a pathologist and grantee of Japan's Smoking Research Foundation (an industry body within the Ministry of Finance)】

Ref.)http://www.anti-smoke-jp.com/saiban/ikensyo.htm


「“原因”は病理によってのみ確定されるのであり、“疫学”によっては確定されないのである」
Ref.)Kanisawa N. Ikensho [Expert report], in Japanese, prepared for the Tobacco Disease Lawsuit; 2001, p 39(http://www.anti-smoke-jp.com/saiban/


“肺癌の原因は病理によってのみ確定されるのであり、“疫学”という証拠をいくらあげても無駄だよ”という意見書が大幅に採用され、司法判断が下されているのである。

疫学者はこの裁判に対して、批判してないのだろうか?

ほんとに、すべての肺癌の原因が“現行の病理により確定”できるのだろうか?

では、この病理学者に個々の肺癌の事例について、原因を特定していただきたく思うのだが・・・

交通事故にあった原因はすべて事故現場にあり、その前のいねむりの状態や急いでいる状況などには関係ないといっているようなもので、ほんとにそうなのだろうか?

・・・詭弁にすぎないと思うのだが、判決上の重大な根拠として採用されている。


我々医療者は警察・検察・裁判所など司法判断により、医療の現場がかき乱されつづけている。
業務に対する超人的な要求を是認され、感情論主体の科学的根拠を無視した科罰的内容が続いている。

医療者全体に司法不審が増している。この状況は、患者や一般国民に対して利にはならない。

医師側各団体がその意見を公的に表明することが、まだ少ないが、次第に増えてきていることは当然のことだと思う。
司法判断にばかげた素人判断が含まれているときには、日時を置かず、即座に、専門的意見を表明すべき・・・私はそのようにおもうのだが・・

by internalmedicine | 2006-10-28 11:53 | 呼吸器系  

<< 糖尿病患者のスタチン治療は肺炎... アルコールによるえん下障害 >>