非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対するアクトスの効果



武田製品がらみなので、プライマリアウトカムを確認する(なぜならば・・・タケダはいろいろごまかすのである):
1. 肝臓の組織変化:肝生検評価:脂肪肝・炎症性変化
2. 肝臓内の脂肪含量:MRSによる評価
3. 肝臓のインスリン感受性・糖代謝
http://clinicaltrials.gov/show/NCT00227110



今回は、つっこみどころ少ないようであった・・・


A Placebo-Controlled Trial of Pioglitazone in Subjects with Nonalcoholic Steatohepatitis
NEJM Volume 355:2297-2307 November 30, 2006 Number 22
NASHの治療に関して非薬物治療が有効であるということが判明している。

NASHはインスリン抵抗性、 steatosis、necroinflammationで特徴づけられている病態であり、小葉中心性の線維化を伴う場合と伴わない場合がある。
Piloglitazoneは2型糖尿病のインスリン抵抗性を改善し、脂質代謝を改善するthiazolidinedioneである。

55名のIGTもしくは糖尿病患者で肝生検を受け、NASHと診断された患者をランダムに割り当て、6ヶ月の低カロリー食事+pioglitazone(45mg/日)あるいは低カロリー治療+プラセボを行ったもの
治療前後で、肝臓の組織学的な特徴を評価し、MRSにて肝臓の脂肪量を評価、経口糖耐用能試験(経口および静注による[14C]ブドウ糖投与)を試みたもの

結果:プラセボに比較して、pioglitazone群は、糖コントロールおよび耐容能改善(P<0.001)、肝臓のaminotransferase値正常化(血中AST値減少 40% vs 21% P=0.04、ALT 58% vs 34% P<0.001)、肝脂肪含有量減少(54% vs 0% P<0.001)、肝インスリン感受性亢進(48% vs 14% P=0.008)
pioglitazone投与はプラセボに比較し、脂肪肝に関する組織学的所見(P=0.003)、ballooning necrosis(P=0.02)、炎症((P=0.08)、いずれも改善
1名のみ疲労・軽度下肢浮腫進展、他の副作用イベントは認められない



トライアルとして大成功なのではないだろうか?




NASHは、肝硬変へ進展することもある慢性の肝疾患で、インスリン抵抗性、肝臓への脂肪蓄積があり、何より小葉中心性のnecroinflammationが特徴で、小葉中心性の線維化を伴わないものもある。この疾患は典型的特徴から考えてcommonと考えられており、脂肪肝、肥満、2型糖尿病といったものが増加しており、おそらくその頻度も増加しているであろう。結論づけられた薬物治療が無い以上、体重減少がこの治療として有効と判明されている唯一の方法ということになる。
多くの薬物的介入がなされているが、その成果はばらばらである。
たとえば、pentoxifilline、 orlistat、 vitamin E、ursodeoxycholic acid、高脂血症薬などである。metforminやthiazolidinedioneなどの血糖降下薬のトライアルである程度の効果が証明されているようであるが、この使用を支持するためのランダム化偽薬対照研究はまだなされていなかった。

Pioglitazoneは、thiazolidinedione誘導体で、peroxisome proliferator–activated receptor γ (PPARγ)アゴニストで、インスリン抵抗性を改善し、2型糖尿病の糖・脂質代謝を改善するのだが、NASHにおけるインスリン抵抗性は主に慢性高インスリン血症、高血糖、肝臓への血中遊離脂肪酸の過剰供給などを伴い、肝臓のlipogenesisを促進する方向に働く。これらの異常をPioglitazoneは脂肪組織、肝臓、筋肉でのインスリン抵抗性を改善する可能性がある。血中adiponectin低値や肝臓のadiponectin受容体発現低下などがあり、血中adiponectin値、活性化AMP--activated protein kinaseを増加させ、脂肪酸oxidationを刺激、肝臓の脂肪酸合成を抑制することとなる。NASH患者において、細胞内proinflammatory signal経路の活性化があり、thiazolidinedioneは抗炎症作用を有する。



現在、トライアルとしては、Pioglitazone versus Vitamin E versus Placebo for the Treatment of Nondiabetic Patients with Nonalcoholic Steatohepatitis (PIVENS) Treatment of Nonalcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) in Children" (TONIC)があるとのこと・・・



問題は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断の方である。
肝生検を必須とするので、なかなか診断確定というのが難しい。
アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、Celiac Sprue、肝硬変、ヘモクロマトーシス、ウィルス性肝炎が鑑別にあげられる。


(Concurrence of Histologic Features of Steatohepatitis with Other Forms of Chronic Liver Disease ;Mod Pathol (2003), 16(1):49-56; doi:10.1097/01.MP.0000042420.21088.C7)

採血所見では特異的なものはないが、AST、ALT増加のみのことがあり、正常域の10倍まで増加することもある、そして、AST、ALT正常であることもある。AST/ALT:2以上ならアルコール性、1未満ならNASHの可能性がある。ALP増加もあり、通常正常域の2-3倍未満。脂質以上が存在する可能性、TG増加が子供では主。血中フェリチン、血清鉄の増加とトランスフェリン減少が生じる可能性、Iron Index Scoreで肝生検オーダー、瀉血などを考慮する場合がある。ウィルスマーカーは必ず検査し、除外が必要である。自己免疫マーカー:抗核抗体、anti–smooth muscle antibody (ASMA)などが増加することもある。serum protein electrophoresis (SPEP) やanti–liver-kidney antibodyによって自己免疫疾患診断に至る場合もある。(eMedicineから)


臨床的にはこういった上記所見で診断を疑い、生検で確定診断となるはず・・・だが、その生検が・・・limiting factorである。




AMA-positive PBC.
脂肪肝炎;脂肪肝、ballooning、小葉性の急性・慢性炎症がみられる(HE染色:A)、(トリクローム切片:B)
zone 3の特徴的なpersinusoidal fibrosi(上左)
門脈(下右)は線維化の広がり、おそらくはPBCによるものと思われる。


このトリクローム染色はα1-AT欠損肝臓疾患
pericellular fibrosisが、周辺のballoon化した肝細胞、いわゆる"chickenwire fibrosis"となっている(α1-AT欠乏に特徴的というわけではなく脂肪肝炎に極普通にみられる所見)(マッソントリクローム染色).


C型肝炎のケースで、zone 3のperisinusoidal fibrosisがみられ、脂肪肝炎に特徴的であり、C型肝炎に特異的というわけではない(マッソントリクローム染色)

by internalmedicine | 2006-11-30 11:45 | 動脈硬化/循環器  

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