局在・低・中等度グレードリスクの前立腺癌は治療すべきか?

PSA検診の問題点は低グレードの前立腺がんが多く含まれることで、ほんとに検査・治療が必要だったのか?・・・という疑問を払拭できなくなる。こういった側面をついて、がんもどき理論のような過度に一般化された話がでてきて一般人を混乱に貶めることになるのである。

実際、前立腺がんでは悪性度のグレーディングで議論がなされることが多い。これは、グレードが治療戦略に影響を与えるわけだが、これもほんとはひとつの仮説にすぎないわけで、ひとつの指標を示した場合はそれを再評価・補正することが大事。

日本では、医療に限らず、為政などはもっとひどいが、ごく一部のひとの頭の中にうかんだ考えをごり押し・・・批判は許さないという非科学性がまかり通っているのである。・・・話が横にそれたが・・・


Survival Associated With Treatment vs Observation of Localized Prostate Cancer in Elderly Men
JAMA. 2006;296:2683-2693.

局所にとどまる前立腺癌に対する治療に有益性があるか、65歳以上では不明である。
Wongらは、住民ベースの観察コホート研究で65-80歳の低リスク~中等度リスク患者、治療選択vs観察選択で評価
12年フォローアップ期間で、治療しなかった患者より治療群の方が生存率が高かった。








LitwinとMillerは観察研究の限界と治療の個別化の重要性に関して議論している。




前立腺癌のGleason score()





PSA検診の広がりと共に早期の低・中等度前立腺がんの早期診断が増加している。このマネージメントは観察、放射線治療、積極的な前立腺摘出がなされるが、コホート研究では議論のあるところである。初期治療としての低リスク局在疾患で観察を選択する例はわずか7-17%である。積極的治療法がovertreatmentなのかどうか見極める必要が出てきたのである。
スウェーデンの695名のトライアルでは積極的な前立腺切除が生存率を改善し、疾患特異的死亡率、転移リスク、局所進展リスクを下げたという報告が8.2年フォローアップにて認められたという報告(N Engl J M Volume 347:781-789 2002)がある。このサブグループ研究では、治療効果は65歳未満で、65-75歳に比較して有効性が高いという報告も含まれている。ただ、例数が少なく、結論は先送りにされた。

Veterans Affairs Prostate Cancer Intervention vs Observation (PIVOT) trialやUK Prostate Testing for Cancer and Treatment Study (Protect)、the American College of Surgeons Oncology Group's Surgical Prostatectomy vs Interstitial Radiation Intervention Trial (SPIRIT) というのがongoingであるが、観察研究との比較というランダムトライアルはないのである。

やんごとなき方の病気ということで、PSA検診は爆発的に広がったが、臨床的意義付けがあいまいになっていたのではないかという疑問を以前から持っている。日本で国家的に研究できるよい機会だったと思うのだが、あいもかわらず日本という国は、エビデンス検証に積極的でない。

今回の結果は、積極的治療への強固なエビデンスというわけではないことを強調する。
個別化の判断材料として用いるべきであるというニュアンスが論文にもEditorialにも書かれている。これが米国での前立腺がん治療のスタンスなのだろう。

by internalmedicine | 2006-12-13 09:06 | 医療一般  

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