インフルエンザワクチン:Driftでの有効性、学校での集団接種の有効性



抗原連続変異(antigenic drift)というのを確認しながら、004-2005年冬のシーズン中に、不活化ワクチンと生ワクチンの有効性を報告、前者 67-77%、後者 30-57%であったとのこと。

Prevention of Antigenically Drifted Influenza by Inactivated and Live Attenuated Vaccines
n engl j med 355;24 december 14, 2006
総数1247名、2004年10-12月にワクチン接種。 ミシガンでのインフルエンザの活動性は2005年1月にはじまり抗原変異(drift)が生じたA型(H3N2)・A/Califronia/07/2004-様ウィルス種とB型の流行があった。
両タイプに対する不活化ワクチンの絶対的有効性は細胞培養中のウィルスにて測定にて77%(95%CI 37-92%)、細胞培養・リアルタイムPCRにより同定による測定で75%(95%CI 16-87%)、ウィルス同定あるいは抗体増加による判断では67%(95%CI 16-87%)
生ワクチンの絶対的有効性は、57% (95% CI, –3 to 82), 48% (95% CI, –7 to 74), and 30% (95% CI, –57 to 67)
この有効性の違いは、主にB型インフルエンザに対する有効性の違いのようである。
kっつろとしては、不活化ワクチンは研究室で確認された有症状インフルエンザ疾患予防に有効であり、生ワクチンはインフルエンザ予防に有効であるかもしれないが、やや高価の面で落ちる。




学校でのインフルエンザ集団予防接種
こどもはインフルエンザウィルスの重要なvectorである。学校での予防接種により子供の居宅にインフルエンザ様疾患がどのように影響をあたえたかの研究。
ワクチン介入された学校の家族は有意にインフルエンザ様疾患のアウトカムが少なく、インフルエンザ様症状、熱+咳嗽・咽頭痛、子供の医療機関受診減少、小学校から高校までの欠席数、成人の就労数まで影響を与えた。


Effectiveness of School-Based Influenza Vaccination
n engl j med 355;24 14, 2006
4つの州の小学校で11の類似した地理的クラスターで行ったもの
一つの学校にワクチンプログラムを割り当て(介入学校)
一つもしくは二つの学校には行わない(対照学校)
各州のピークのインフルエンザ活動性機関を想定し、すべての子供の家族を調査
【結果】介入学校の47%で生ワクチン施行。
対照学校家族に比較して、介入学校は有意にインフルエンザ症状・アウトカム減少。
奇異的に介入学校は対照学校より100名あたりの入院率が高い
しかし、子供・成人の包括的入院頻度は差がなかった。
原因を問わない学校の欠席率は差がなかった。

結論としては、学校のインフルエンザワクチン接種は、インフルエンザ様症状の関する多くのアウトカムを改善する




後半の学童集団予防接種においては、日本の行政が善政を行った稀なる事例であったとおもうのだが、偏執的医師たちが市民運動を巻き込み、善政を台無しにしてしまった・・・という歴史的経緯・・・これは市民運動が必ずしも正しいとは限らずという教訓的事例として語り継がなければならない。

その名残はいくらでもある。

いまでも“医師会の陰謀による集団予防接種”とレッテル張りに忙しい低脳ネット感情的反ワクチン野郎をみつけるのたいして苦労はしないし、大新聞も本来聞くべき真の専門家に取材することなく、反ワクチン軍団にコメントを求め、世論をゆがめ・・・偏執的考え方がまるで正当・本道であるかのごとく報道史、ゆがんだ世論形成を促進・・・その構造は基本的には変わっていない。
問題となった部分の記載(拙訳):

アンケートデータの初期分析では“介入学校の子供の家族のインフルエンザ様症状による入院率が対照群に比べ増加”がみられた。アンケートの他の項目と反するものであった。
post hoc分析では、二群間に有意差がみられない。このことは、家族のワクチンはほかの子供や大人の入院増加に影響をあたえていないことを示唆するもので、増加をもたらすということではない。質問項目が適切でなかったとも考えられる。
介入群の家族の入院率増加は理解不能な項目である。


一部の反ワクチンがちがち小児科医たちは、ワクチン介入学校において、入院率がたかかったことを誇大報告し、「ほらっ、ワクチンは有害だと証明された」と宣うことだろう・・・彼らのワクチン論文の揚げ足取りに終始し、全体像をみようとしないワンパターン発想は抜けない・・・

by internalmedicine | 2006-12-14 09:42 | 感染症  

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