MCI(軽度認知機能障害)のFDDNP-PETによる検出

尾道市医師会DDプロジェクト(認知症早期診断プロジェクト)とともに、このFDDNP-PETに関して、NHKスペシャルで触れたという話を聞いた。民放のアホ番組とちがい、まともな番組だったんだろうと思う。
ちなみに私は、“脳科学者”を番組に出すようになってから・・・NHKの科学番組も信用できないのだと思うようになってきたのだが・・・



NEJMで、この検査法を利用して、MCI(軽度認知機能障害)の検査として用いることができるか検討されている。

アルツハイマーに関しても、病状が進行するに従って陽性所見が画像に現れる方が確かにわかりやすい・・・

アルツハイマー病患者 (上段) と認知機能正常の対照群 (下段).
このスライドはtransaxialに海馬レベルでの画像.
アルツハイマー病患者は、側頭葉(中列)のブドウ糖代謝率低下(~20%).
海馬の細胞減少を示唆するserotonin 1A受容体密度(50-60%)(右列).
神経線維塊や老人斑の存在にて[F-18]FDDNP結合部分定量にてすべての皮質領域で増加(左列).






PET of Brain Amyloid and Tau in Mild Cognitive Impairment
NEJM Volume 355:2652-2663 December 21, 2006 Number 25
【背景】アミロイド老人斑(Amyloid senile plaques)とtau神経原線維塊(neurofibrillary tangles)は、アルツハイマー病の神経病理学的な特質であり、アルツハイマー病のリスクをもつMCIでも脳の皮質に蓄積している。
非侵襲的にこれらの異常を検知できれば、薬剤発見・診断などの代理的マーカーとして役立つ。

【方法】83名のボランティア
認知機能試験にて、25名:アルツハイマー病、28名:MCI、30名障害無し(対照)

【結果】
FDDNP-PETによる結合global value(側頭葉、頭頂葉、後帯状回)は対照群でMCI群より低値(P<0.001)、MCI群がアルツハイマー病患者より低値(P<0.001).
FDDNP-PET結合による指標の方がはFDG-PETの代謝やMRIのvolumeの指標より診断的価値が高い


この論文の前書きがよくまとまっている。
MCIは正常の加齢からアルツハイマー病との一過性の病期である。
最近の研究では、ADLの能力の侵害することがないのが特徴であるMCI、75歳未満では19%、85歳以上では29%の頻度

MCIでは、約30%は健忘性のMCIであり、年齢に相応しない異常な記憶障害であり、正常の認知機能であるものである。

MCIの毎年約12%、6年間で約80%、アルツハイマー病へ進行する。
アルツハイマー病は進行性であり、次第に認知機能障害が生じるのである。

2つの蛋白βアミロイドとtauは、加齢とともに、類推可能な局在パターンで蓄積するのであるという神経病理学の研究結果がああり、これは30歳以前にはじまり、加齢と共にこの病変の頻度が増加するのである。

MCIの患者では、neurofibrillary tangleがhippocampusや他のmedial temporal regionに検出される。

アルツハイマー病へ進展すると、このneurofibrillary tangleはparietalやfrontal領域へ広がるのである。

neruritic plaqueは正常の加齢現象のみの人では稀で、MCIでは認められ、hippocampusやneocortexで認められ、アルツハイマー病の進展と共に明らかとなる。

アミロイド老人斑やneurofibrillary tangleは剖検時のアルツハイマー病の確定診断に必要となっている。


治療は現在開発中だが、この脳のplaque蓄積の予防、一度できあがったものをdisaggregateする方法が考えられている。
非侵襲的な方法でこの病変の領域パターンを決定する方法は早期アルツハイマーだけでなく、治療の有効性判定のために用いられるだろう。

amyloid tracerを用いたPETにて、対照群より高いレベルの脳アミロイドを検出できるようになり、Pittsburgh Compound-B (PIB)なども
今回、 2-(1-{6-[(2-[F-18]fluoroethyl)(methyl)amino]-2-naphthyl}ethylidene)malononitrile (FDDNP)という小分子のものを用いた研究であった
側頭、頭頂、前頭に結合したFDDNPはアルツハイマー患者で認知障害のない対照群に比べ有意に高度であった。

FDDNPとその親分子である、 2-(1-[6-(dimethylamino)-2-naphthyl]ethylidene)malononitrileは蛍光性であり、in vitroでplaqueやtangleを視覚化する
結果、共焦点蛍光顕微鏡で観察できることとなる。

この方法を用いてin vivoの脳のイメージングをMCIとアルツハイマー病で検討したものである。

by internalmedicine | 2006-12-21 09:02 | 医療一般  

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