長期PPI処方は股関節骨折を増加させる

Long-term Proton Pump Inhibitor Therapy and Risk of Hip Fracture
JAMA 2006;296 2947-2953


【序文】PPIは、胃低クロール症によるカルシウム吸収への影響だけでなく、破骨細胞のvacuolarタイプ(液胞型)のプロトンポンプの抑制にて骨吸収を減少させる可能性がある。

【目的】PPI治療と股関節骨折の関連

【デザインなど】イギリスの患者の情報を含むGeneral Practice Research Database (1987-2003), のnested case-control study
50歳超のPPI治療と制酸剤未使用患者を含むコホート
股関節骨折の発生を含むすべての患者
対照は、発生頻度密度サンプリングを用い選択、性、index date、誕生年、index date以前の暦期間と標準フォローアップ期間をマッチ

比較目的にて、同様のnested case-control analysisをH2拮抗剤でも行った。

【メインアウトカム】PPI使用と股関節骨折のリスク

【結果】
135386名股関節骨折と135386名の対照

・PPIs治療1年以上では股関節骨折の補正オッズ比増加:
(AOR, 1.44; 95% CI、 1.30-1.59).

・股関節骨折リスクは有意にPPIs長期高用量処方患者で増加
(AOR, 2.65; 95% CI, 1.80-3.90; P<.001).

・PPI治療期間増加と共に、その相関はつよくなる
(AOR <1年>, 1.22 [95% CI, 1.15-1.30]; <2年>, 1.41 [95% CI, 1.28-1.56]; <3 年>, 1.54 [95% CI, 1.37-1.73]; <4年>, 1.59 [95% CI, 1.39-1.80]; 全比較P<.001).


【結論】長期的PPI治療、特に高用量では、股関節骨折のリスク増加と関連がある



不勉強なので、Blocking bone matrix acidificationのお勉強
Vacuolar ATPases (V-ATPases)はmultisubunitの酵素で、限界膜を通してprotonを輸送する働きがある。
V-ATPasesはすべての細胞にubiquitousに存在し、進化的に保存されたものである。
このproton pumpは腎臓の尿細管介在細胞(tubule intercolated cell)の細胞膜や破骨細胞の波状縁(ruffled border)に存在し、細胞外環境の酸化に関係し、骨塩の可溶化に寄与する。
V-type proton pumpは2つの機能的ドメインを有する:末梢性に細胞質のcatalytic sectionは4つのサブユニットからなり、protonチャンネルは3つのサブユニットから形成される。
J Clin Invest, July 2000, Volume 106, Number 2, 177-179>



V-ATPase(vacuolar type proton ATPase) はライソゾーム、エンドソーム、分泌顆粒、シナプス小胞、細胞膜などの空胞系オルガネラに存在し、その内腔に H+ を輸送することによって様々な細胞機能を支えている。(参考)

液胞型ATPase(V-ATPase)は、真核細胞では主に分泌経路上に存在する
細胞内小器官の膜上に存在し、細胞質のATP の加水分解に共役して細胞内
小器官内腔にプロトンを輸送する(参考:pdf



・・・・逆流性食道炎を合併する老人が増加し、H2R遮断剤だけのときは非常に苦労していた。PPIのおかげで、ずいぶん管理が楽になった気がするが、股関節骨折リスクも念頭に置かなければならなくなったわけである。

by internalmedicine | 2006-12-27 08:15 | 消化器  

<< 思春期自殺の家族的因子 骨粗鬆症ビスフォスフォネート治... >>