喘息: トータル・コントロールとウェル・コントロール

GOAL(Gaining Optimal Asthma ControL)スタディに関するもの

新しいGINAガイドラインを熟読してないので、薬屋さんの受け売りになってしまうのだが、
新たなガイドラインでは、喘息の長期的なコントロールの達成と維持こそが喘息治療の目的であると強調されており、これまでの「重症度に応じた治療法」から改変し、「コントロールレベルによる治療法」を提示しています。 つまり、患者さんのコントロールレベルに応じて現在受けている治療の見直しを行い、治療を進めることが推奨されています。

治療内容については、GINAが提唱する5段階の治療ステップの中で、コントロールレベルに応じた最適な治療が選択されることとなります。


・・・とのこと、以前概略翻訳した分と比べると、さすがに、良好コントロール時のback downを省いて、増量を強調するところはさすがか・・・?


The correlation between asthma control and health status: the GOAL study
Eur Respir J 2007; 29:56-62

より高いレベルのコントロールを目標としているuncontrolled asthmaの患者ガイドラインコントロールとHR-QOLの研究で、喘息QOL(AQLQ)を用いて評価したもの

ランダム化二重盲検、パラレル・グループ研究
フルチカゾン(FP)とサルメテロール/フルチカゾン合剤(SFC)の有効性を比較したもの
2つのcomposite:ガイドラインのコントロール測定:トータル・コントロール(TC)とウェル・コントロール(WC)
このレベルに達しないものは非ウェル・コントロール(NWC)として分類
患者がTCもしくは最大投与量に達するまで増量
【結果】QQLQスコアはこの研究を通して改善、TC・WC到達患者においてはnear-maximalのレベルまで改善。52週平均スコアは統計学的に有意差あり。
臨床的に意味ある改善(ベースラインからの平均差)は、TC群(SFC 1.9、FP 1.8)、WC群(SFC 1.5、FP 1.5)、NWC(SFC 1.0、FP 0.9)

【結論】喘息のコントロールを目的とした治療はHR-QOLを正常に近づくレベルまで改善する。
TC、WC間のAQOLスコアは高レベル間のコントロールで区別される。






(GINA1998に基づく)
Can Fam Physician. 2006 February 10; 52(2): 187–189.

日本語訳:GW社のWebから
GOALスタディの目的を満たすために設定されたトータル・コントロールおよびウェル・コントロール定義は以下の通りである。

トータル・コントロールの定義:
 日中の症状がない
 喘息により夜中に目が覚めることはない(夜間覚醒がない)
 急性増悪がない(喘息症状の悪化による経口ステロイド薬の使用、救急外来の受診、入院の必要がないこと)
 頓用の吸入β2刺激薬を使用しない
 救急外来の受診がない
 朝のピークフロー値が毎日80%(対予測値)以上
 治療の変更を要する副作用がない
これらの条件は、連続した8週間のうち少なくとも7週間満たされていなければならない。


ウェル・コントロールの定義:
 日中の症状が週2日以下
 頓用の吸入β2刺激薬の使用が週2日以下で1日4回まで
 朝のピークフロー値が毎日80%(対予測値)以上
かつ以下のすべての基準を満たす状態。
 喘息により夜中に目が覚めることはない(夜間覚醒)
 急性増悪がない(喘息症状の悪化による経口ステロイド薬の使用、救急外来受診、入院の必要がないこと)
 救急外来の受診がない
 治療の変更を要する副作用がない



体勢に影響はないのだが、“Partly-Controlled”=「ウェルコントロール」、“Totally-Controlled”=「トータルコントロール」とするのはちょっと違うと思う。
GOALのTotal controlledとGINA(2006)のControlledの項目の違い
呼吸機能 GOAL:朝方のPEF vs GINA(2006):PEF or FEV1で予測式 or best比較80%
急性悪化 GOAL:最小(ほとんど無い) vs GINA(2006) :1年に1回以上
ED受診 GOAL:NoとNoneという表現 vs GINAには項目なし
治療に基づく副作用 GOAL:最小と喘息治療に影響を与えるものはない、GINAには項目無し

by internalmedicine | 2006-12-30 08:39 | 呼吸器系  

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