高血圧男性におけるアルコール消費と冠動脈疾患

高血圧男性において、飲酒量に関して用量依存的に、心筋梗塞発生リスク減少とのこと・・・だが、解釈に注意しなければ論文である。

昨今、飲酒運転などで、アルコールに対する世間の目が厳しくなっている。
アルコールのプラスの効用の話をするときには、過量飲酒とアルコールに起因する社会的問題などの看過できないこととも触れなければならないのだろう。
アルコールの適量摂取の健康に関する正の影響の報告もよくよく見ればさほどエビデンスレベルの高いものはないという報告もあるのである。

16年の前向き研究、11711名の高血圧男性医療従事者で4年毎の平均飲酒量報告
絶飲酒男性に比べ、10-14g/日(平均約1ドリンク)、15-29g/日、30-49g/日、49g/日超で心筋梗塞リスク減少をみとめ、アルコール摂取は総死亡・心血管疾患による総死亡と相関していないように思える。
注意すべきは、この調査は事故報告であり、アルコールと卒中の正確な相関の結論に関してはそのアウトカムが少なく限界がある。


Alcohol Consumption and Risk for Coronary Heart Disease among Men with Hypertension
Ann Int Med January 2007 Volume 146 Issue 1 Pages 10-19

653名のMI記載

アルコールを控えている患者に比べ、MIのハザード比
0.1 - 4.9 g/日 1.09 (95% CI, 0.86 - 1.37);
5 - 9.9 g/日 0.81 (CI, 0.60 - 1.08 g/d);
10 - 14.9 g/日 0.68 (CI, 0.51 - 0.91 g/d);
15 - 29.9 g/日 0.72 (CI, 0.54 - 0.97 g/d);
30 - 49.9 g/日 0.67 (CI, 0.48 - 0.94 g/d);
50 g 以上/日 0.41 (CI, 0.22 - 0.77 g/d) (P < 0.001 for trend).


致死的・非致死的な心筋梗塞は同様な相関

飲酒と総死亡、CVD死亡に関しては相関無し

10~29.9g/日飲酒者は、非飲酒者に比較して、総卒中リスク、虚血性卒中リスクは 1.40 (CI, 0.93 - 2.12)、1.55 (CI, 0.90 - 2.68)

飲酒量、食事性の因子、BMI補正して、12.5g/日毎にMIハザード比は0.68であった。



CME course

video news






患者向け
・この研究の意味するところは・・・

高血圧男性患者の中等の飲酒は心臓発作、卒中、心臓疾患からの死亡リスクを増やさない。そして、心臓発作のリスクを減少させるかもしれない。
※あくまでも一般論であり、医療専門家に相談を!・・・との記載あり


National Instititue on Alcohol Abuse And Alocholism of the National Institutes of Health
あなたの心臓にアルコールはよいか?
Is alcohol good for your heart?

中等度の飲酒(男性で1日2ドリンク、女性では1ドリンク)は飲酒しない人あるいはそれ以上の人の比べ心臓疾患で死亡する可能性は少なくなる。より少ないアルコールは血中の化学組成を変化、心臓の動脈中の血栓リスクを減少させて予防的に働く可能性がある。
もし、非飲酒者なら、単に心臓のためだけにわざわざアルコールを飲み始める必要はない。運動や脂肪食の少ない食事にすることによっても予防できる。もし、妊娠中もしくは妊娠する可能性があるなら、健康上有害となる可能性があるなら、飲酒すべきでない。

安全に、そして飲酒するなら、ほどほどにしなさい。

過飲酒は心不全、卒中、高血圧、肝硬変などの医学的リスクを増加させる。


Moderate Drinking

Alcohol Coronary Heart Disease






独立行政法人 農畜産業振興機構の“日本人の食と健康”
長野市周辺に居住する健康な成人男性2,165人について飲酒と栄養摂取状況・・・飲酒者では、飲酒量の増加に伴って糖質源の食品(特に穀類)の摂取が減少・・・「アルコール+低糖質食」は・・・アルコールによるCYP2E1の誘導は、低糖質食によって相乗的に増大する。

CYP2E1が相乗的に誘導されるとともに脂質過酸化を抑える還元型グルタチオン(GSH)が減少する。飲酒時に糖質摂取が減少するとCYP2E1の誘導と肝GSHの減少があいまって、活性酸素の発生と脂質過酸化を促し、アルコール性肝障害を引き起こす。

哺乳動物の細胞には「糖質→アルコール」を触媒する酵素は存在しない・・・化学構造からみて、酢酸は脂肪鎖の最も短い脂肪酸(短鎖脂肪酸)・・・アルコールは脂肪に似ている・・・アルコールを飲用する時には、糖質を減らすのではなく、脂肪を減らさなくてはならない・・・
なお、このページには、“糖負荷試験前日の夕食に低糖質食を摂ったことによる耐糖能の悪化”や“糖質の摂取量の少ない欧米では、糖質の重要性に関する認識が極めて乏しい。総カロリーの80%を糖質が占める高糖質食が糖尿病患者の血糖管理に有効であるという報告15)が行われて久しいが、このような食事は欧米人の嗜好に合わないという理由で相手にされなかった”など、興味有る記載が多い(単なる私の知識不足によるものかもしれないし、現実にエビデンスがあるかどうか・・・検討も必要だが・・)。

by internalmedicine | 2007-01-03 07:53 | 動脈硬化/循環器  

<< COPD患者に対するICS a... 葉酸と聴覚障害 >>