Post-traumatic stress disorder: medicine and politics

PTSDは刑事,民事の領域にわたって,さまざまに利用されてきた。同時に,その乱用や誤用も早くから指摘されてきた。

【特集・司法とPTSD】

traumaという言葉は英英辞典を引く
1. emotional shock: an extremely distressing experience that causes severe emotional shock and may have long-lasting psychological effects

2. bodily injury: a physical injury or wound to the body

・・・と書かれている。故に、情緒的なショックをも元々示しているのである。

PTSD="post-traumatic stress disorder"は、子どもを除いて、生命の危機に陥る可能性があるほどの状態や身体的な危機恐怖があった場合に用いる事となっており、traumaがどの程度なのかが非常に曖昧となる。

臨床医は、“被害者に強くあってほしいという願望”と“犠牲者に対する同情の念”の緊張関係にバランスをとることになれている。特定の患者では、元々存在する心理生物学的メカニズムを有する明確な疾患と考えるべき例もあり、疾患の存在があると考えるべき例もある。これが外傷後に明らかになっただけと考えるべき例、パーソナリティー障害や慢性疲労症候群を含む例もある。この障害を医療化することのメリットについて議論がなされているが、目的より治療という観点からスタートしているものである。
外傷というイベントの経験とその後の症状には時空的なばらつきが見られ、外傷後の疾患やdistressがすべてPTSDという訳ではないということは強調したい。
医療化には限界があり、回復という観点から外傷中、外傷後にも対処する必要がある。



Post-traumatic stress disorder: medicine and politics
The Lancet, Current Issue, Volume 369, Number 9556, 13 January 2007
残念ながら、外傷に見舞われることは世界的にcommonなことであり、重篤な心的な悪影響を及ぼすことがある。外傷後・ストレス障害への関心が生じ、Medicalisation(医療化)するが多くなっている。
外傷後・心理的な後遺症が現実性をもって一般的に受け入れられ、疾患の病態形成に関する研究が盛んになり、薬物的・心理学的マネージメントの改善に導かれている。
外傷の主観的経験とその後の症状の表出は、時空的に、ばらつきがあり、すべての心理学的障害や精神疾患がPTSDと名付けられるべきではないと著者らは主張する。
医療化への限界があり、外傷中・後の適応という項目に注目すべき価値がある。
ヒロイズムや回復力(resilience) vs 被害者意識(victimhood)のバランスを崩すことが、臨床や社会において、外傷後の、重大かつ一定の問題となっている。




軽薄なメディアとそれを真に受けて、拡大解釈による疾病利得に陥る一部ケース、そしてそれを助長するメディア・・・不勉強な司法関係者の軽薄な判断・・・これは米国も同様なようである。さすがに、自省するような論説が出現するようになってきた。

日本ではあいかわらず不勉強な尻の軽い医療専門家?がメディアを席巻し、その雑音が一種の事実であるごとく、伝聞で確立してしまう。そんなことをまだ繰り返している様な気がする。・・・


交通事故を原因としてPTSDが認められた場合の等級例

医療の素人である司法が医療の判断をしてしまう危険性があると私は思うのだが・・・

by internalmedicine | 2007-01-16 12:10 | 医学  

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