冠動脈疾患患者うつに対する治療は個別心理療法よりSSRIの方が効果がある

心理療法導入は一般的に薬物療法より無批判であることが多く、結果、医療費を総体的に上げる一因となっていると思う・・・と書くとますます批判も多いと思うが・・・やはefficacyやbenefitの俎上に上げなければならない分野であることは違いないとおもうのだが・・・
片方、SSRIに関しては若年者自殺など、多くの明らかになったリスクが存在する。では、心理療法には副作用がないのだろうか?そして有効性は十分なのだろうか?

(CREATE) Trialの報告をみながら、個人的にそうおもった。



JAMAにて
JAMA. 2007;297:367-379.
うつは、冠動脈疾患入院患者に多く見られ、心血管合併症や死亡リスク増加と関連をもつ
しかし、CAD患者のうつ治療介入に関する有効性の評価の研究は少ない

Lesperanceらは、
1)interpersonal psychotherapy (IPT) 12週間+臨床マネージメント vs 臨床マネージメントのみ(n=142 vs n=142)
2)SSRIであるcitalopram(20-40mg/d)12週間 vs マッチしたプラセボ(n=142 vs n=142)
で比較。

研究者たちは、citalopramがプラセボより優れていることが示され、週毎の臨床マネージメントにプラスした場合、うつに関する自己報告・臨床評価自覚症状の減少に役立つことが判明。

個別治療を臨床マネージメントに加えることのエビデンスはない。

【メインアウトカム】
プライマリアウトカム測定:ベースラインと12週における変化:24-item HAM-D(ブラインド化された中央電話インタビューによる)
セカンダリアウトカム測定:Beck De@ression Inventory II(BDI-II)スコア

【結果】
Citalopramはプラセボより、12週後のHAM-Dスコア良好 (mean difference, 3.3 points; 96.7% confidence interval [CI], 0.80-5.85; P = .005), with a small to medium effect size of 0.33.

平均 HAM-D response (52.8% vs 40.1%; P = .03)と寛解率 (35.9% vs 22.5%; P = .01)、BDI-II スコア減少 (差 3.6 points; 98.3% CI, 0.58-6.64; P = .005; effect size = 0.33)のいずれもcitalopramが良好

IPTが臨床マネージメントを凌駕するベネフィットを有するエビデンス無し
HAM-D 差 (2.26 points; 96.7% CI, -4.78 to 0.27; P = .06; effect size, 0.23)
BDI-IIの差は (1.13 points; 98.3% CI, -1.90 to 4.16; P = .37; effect size = 0.11)


GlassmanとBiggerが、冠動脈疾患患者のうつに対する、SSRIであるsertralineとcitalopramの有効性と安全性に関して議論している。

※ SSRIである、citalopramは日本では未認可


机上理論が好きな人たちは、個別対応が大事とワンパターンに主張するが、はたして、科学的に客観的に評価された事象なのだろうか?
介護保険は、机上で上からものを見ていた人たちが空想からリアルな世界に制度を作りはじめ、authorityをもった国家的な実験という側面を持つと思う。だが、結果的に個別化は失敗し、残ったものは、妄想集団からの指導の元、書類製作にあけくれ、クライアントに接する時間を無くしたという事実。・・・そのefficacyやeffectivenessを評価することもなく、ましてやbenefitなどは振り向きもされない。

by internalmedicine | 2007-01-24 08:52 | 動脈硬化/循環器  

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