動物実験と臨床トライアルの治療効果の差:動物実験モデルの多くの研究は方法論的に質が低い場合が多い


動物実験モデルの多くの研究は方法論的に質が低い場合が多い・・・という結論

動物実験モデルを完全否定しているわけではなく、動物実験というのは閉じこもってなされるため出版されないものや、疾患モデルとして人間の疾病を反映してないものも多く、不適切な者が多い。ヒトのトライアルと同様、システミックレビューが必要と思われる・・・・とのこと

Comparison of treatment effects between animal experiments and clinical trials: systematic review
BMJ 2007;334:197 (27 January)


臨床トライアル実行前に、新規の薬剤の安全性・有効性に関して動物モデルで通常試験が行われる。医学研究において動物を使うことには議論があるが、MRC(Medical Research Council)の調査では、多くの人がヒトの医療に利益があり、代換が存在せず、不必要な苦痛を生じさせる者ではないとして異論がないとのことである(www.mori.com/polls/2002/pdf/cmp.pdf )。
しかしながら、動物実験の有益性に関して疑問がもたれつつある。
・Croce P. Vivisection or science? An investigation into testing drugs and safeguarding health. London: Zed Books, 1999.
・Sandercock P, Roberts I. Systematic reviews of animal experiments. Lancet 2002;360:586・Macleod M, Sandercock P. Can systematic reviews help animal experimental work? RDS News winter 2005.

動物実験は種の間の生物学的な相違、動物の種類で結果が異なると考える場合もある。
動物トライアルの価値について評価する方法は、historical analyses、 critiques of animal models、surveys of clinicians、citation analysesがある。
この論文では、システミック・レビューからの治療効果を相対する動物実験のシステミックレビューと比較したもの



結論は、動物とヒトの差は、バイアスによるものか、類似疾患動物モデルの失敗によるものである。

benefitとharmが明確でない介入動物研究;頭部外傷、出血時抗線溶、急性虚血性卒中時の血栓溶解、急性虚血性卒中時のtirilazad、新生児RDS予防のための産前ステロイド投与、骨粗鬆症のbisphosophonate


・副腎皮質ステロイは頭部外傷の治療臨床トライアルでは有益性が示されなかったが動物モデルでは有益性が認められた。(pooled odds ratio for adverse functional outcome 0.58, 95% confidence interval 0.41 to 0.83).

出血に対する抗線溶療法は臨床トライアルでは出血減少したが、動物モデルでは結論が出せない。

ヒトの血栓溶解は虚血性卒中ではアウトカム改善した。動物モデルではtPAが24%(95% 信頼区間 20% ~ 28%)卒中用量を減少させ、神経行動スコアを23% (17% ~ 29%)改善させた。

Tirilazadは虚血性卒中患者のアウトカムを悪化と相関。動物モデルでは、梗塞容積を減少 :29% (21% ~ 37%) させ、神経行動スコアを48%(29%~67%)改善させた。

出生前副腎皮質ステロイドは呼吸困難を減少させ新生児死亡率を改善したが、動物実験では呼吸困難を減少させたが、死亡率への効果は結論が出せない状態であった (odds ratio 4.2, 95% confidence interval 0.85 to 20.9).

Bisphosphonatesは骨粗鬆症患者の骨密度増加させた。動物モデルでは、プラセボ比較で 11.0% (95% 信頼区間 9.2% ~ 12.9%)増加させた。腰椎での治療効果は8.5%(5.8%~11.2%)で、前腕部は1.7%(-1.4% ~ 4.7%)


6つの介入において、動物と臨床研究の一致するかどうか状況により様々であった。
tPAによる血栓溶解は動物モデルでは有効で、ヒトの臨床実験でも一致。しかしながら、動物実験はpoor qualityであり、出版バイアスがかかっている。


疾患モデルとかけ離れ不適切だったり(たとえば、外傷実験では受傷後数分というモデルで比較が24時間以内という臨床トライアルと比較するなど・・・)、動物実験の検体数が少なかったり、一つの研究室のデータだけだったり、二重盲検が厳格に実施されてなかったり・・・動物実験だから厳格というわけでもないようだ。

動物実験でのシステミックレビューも増加しつつあるが、臨床トライアルとの類似性評価の指標確率が求められている。

by internalmedicine | 2007-01-26 11:08 | 医療一般  

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