期待権

医学の専門家から見れば、子どもがしゃべっているような医学知識で、専門家を裁く・・・なんて滑稽なんだろう
医学的知識不足の発言、また、公判の起訴状朗読の際、「臍帯」(サイタイ、と通常いう、セイタイでも誤りではないが)を、堂々と「ジンタイ」と読んで弁護団より注意されたことも考慮にいれると、検察側はもっと医学的に勉強していただきたいと強く思った次第でありました

“期待権”というのは、医療の世界ではずいぶん前から当然のように用いられる言葉であり、医療過誤の慰謝料はそれが根拠となる部分が主である。そして、情的な部分を主観的に裁判官が裁量するという構造を医療の専門家は甘んじて受けているのである。

ところがメディアは矛先が自分たちにまわると・・・おもしろい反応を示す。

表現の自由への危うさはらむ「期待権」 NHK訴訟判決 2007年01月29日22時58分(
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200701290353.html?ref=rss

川上和久・明治学院大教授(政治心理学)も、今回期待権が認められたのは、公共放送だからこそ取材する素材には慎重になるべきだ、と裁判所が警鐘を鳴らした特殊なケース、とみる。「疑惑について取材を受けた企業などから、『自分たちの言い分通りに編集しろ』と言われるような問題に波及してしまうと、言論の自由を脅かす恐れがある」と話した。



司法判断ではあるeventが生じると、原因を定量化せず、100%責任をある人物に起因すると認定する場合が多い。責任の相殺ということが交通事故などではなされているが、医療過誤に起因する場合は本来の疾病による死亡や後遺症リスクが勘案されず、一方的に100%に近い責任を医療事故の場に存在したbystanderに与えるのである。
分娩に係わる事故は一定の割合で生じる。それにたまたまでくあわせてしまった医師・看護師・病院は刑事・民事ともに訴えられ、医師の場合は行政処分まで負ってしまう。すると、別の医者の負担が増え、さらに、その確率の少しでも低い状況に努力するようになる。すなわち、萎縮医療、そして立ち去り。医療の現場では小さなリスクでも大げさにリスクを述べ、なるべく安全な選択に誘導する医師・施設も出てくるだろう。特に公的病院では利益より安全性を選択するであろう。現在、産科医療は司法の矛盾の行き着くところとなっているのである。そこに輪をかけて崩壊させようとしているのが“被害者”家族の情的部分をことさらに報道して、この医療崩壊の構図をspareしようとする(引用:http://dog.intcul.tohoku.ac.jp/bbs/spool/log200612.html)





「NHKが番組改変」 200万円賠償命じる 東京高裁
2007年01月29日20時42分 http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200701290245.html

条件付き権利や期限付き権利、あるいは、相続開始前における推定相続人の地位など、将来一定の事実が発生すれば一定の法律上の利益を受けることができるであろうという希望ないし期待を内容とする権利(将来、一定の法律上の利益を受けられることを希望したり期待したりできる権利)で、希望権とも、生成中の権利ともいわれ、最近では、入院患者が、適切な治療を受けることで救命を期待する「救命期待権」などが生まれている。

つまり、権利発生の要件である事実のうち、その一部分のみが発生して、他の一個、又は数個の事実が発生しない場合に、将未権利を取得するという現在の期待、あるいは希望状態が法によって保護される状態をいい、条件付法律行為から生ずる権利(民法128・129条)、取得時効完成前の占有者の権利、相続開始前における遺留分権利者の権利などがその典型である。

この権利が侵害されれば不法行為となるが、権利としてどの程度法的保護に値するかはそれぞれの権利によって異なる(期待権に対する法的保護の内容は、期待権の内容によって異なる)。

医療過誤訴訟では、患者が期待した適切な治療を怠った場合に「救命期待権」の侵害が認められ得る。再雇用の期待を抱かせる説明をした雇用主が契約更新をしなかった際、「更新期待権」を侵害したとして賠償を命じられた例もある。(引用:http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/yougo-horitu-3.htm)



医時紛争における期待権
  初診時に胆嚢癌を胆石と誤診し治療→症状が改善しない
  →発見時には手遅れで死亡→訴訟
  →誤診しなくとも死は免れない状態だった (と認められた)。
  しかし患者は最善の診療を受けることを望んでおり、それを受ける期待権があり、
  この場合それが侵害され、明らかに苦痛を受けた→慰謝料
  法医学講義 医師と法律 (医師法)


司法判断に真に論理性があるのか、ある時はバランスを重視し、ある時は法律の文面だけを重んじた判決などぶれが大きい。彼らは果たして司法試験を合格し、その後のトレーニングだけでのその資質が保持されているのか?その担保があるのか・・・医療関連の裁判に注目するにつけ、疑問を感じている。

かれらも(裁判官、検事ともに)、国民に、その資質の有無を公的に示すべき時だと思う

裁判官一般的判断より偏りの判断を下しやすい裁判官が存在し、それが社会に悪影響を与えるのである。

by internalmedicine | 2007-01-31 08:33 | その他  

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