閉経後ホルモン補充療法で痴呆のリスク

WHIの結果以降、閉経後の女性に対するホルモン補充療法はいったん沈静化していると思っていたのですが、積極的な施設も多いようですね。
リスク・ベネフィットにもとづく、インフォームド・コンセントが取られていると思いますが、ホルモン補充療法にもう一つのリスクが加わりました。


結合型エストロゲン:conjugated equine estrogen (CEE)の認知機能への影響
評価はModified Mini-Mental State Examination (3MSE)で評価。

Conjugated Equine Estrogens and Global Cognitive Function in Postmenopausal Women
JAMA. 2004;291:2947-2958.
65歳以上の女性でホルモン療法は認知機能へ悪影響をあたえる。治療開始後認知機能の有意な低下が見られた。

ということで新たなホルモン補充療法のリスクがはっきりとしてきたということです。


WHIによる日本産科婦人科学会の見解
(1) 更年期・閉経後女性に対するヘルスケアの基本は、従来から強調されてきたように、精神・身体機能の評価と、これらに基づいた食事・運動・栄養などの生活習慣の適性化であり、それで十分な効果が見られない場合には薬物療法を行う。
(2) HRTは薬物療法の1つの選択肢であり、これを選択するに当っては、一人一人の女性について、そのリスクとベネフィットを慎重に判断する。
(3) 更年期症状(ホットフラッシュ、発汗などの血管運動神経症状、うつ、不眠などの精神神経症状、腟萎縮などの泌尿生殖器萎縮症状)を適応とする短期のHRTのリスクとベネフィットについて今回の報告では言及されていない。更年期症状に対するHRTの効果は明らかであるので、治療前に禁忌でないことを確認し、また治療開始後には、その効果を判定するとともに、乳がんやその他の異常所見の有無をチェックして安全性を確認しながら治療の継続・中止を判断する。
(4) 閉経後骨粗鬆症に対するHRTの予防・治療効果は明らかであるが、他にも骨折予防効果を有する薬剤があることも伝えるべきである。
(5) 心血管系疾患の予防を目的として、結合型エストロゲン0.625mg/日と酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/日の連続服用によるHRTを、本試験の対象となった米国の女性に対して行なうことについては否定的な結論が得られた。従って、本邦女性でもリスク因子(肥満、高血圧、喫煙習慣など)を有する場合には、本試験の結論に則し、心血管系疾患の予防を目的としては、この処方によるHRTは行なわない。
(6) 子宮のない女性に対しては、エストロゲンのみを用いる。子宮の有る女性に対するHRTには、子宮内膜がんの予防の見地からプロゲスチンの併用が必要である。プロゲスチンの併用方法については、同時連続療法であれ、周期的療法であれ、それに伴うリスクを十分に説明し、納得を得た上で行なう。治療開始後は乳房検診・血圧測定、脂質や凝固線溶系の血液検査などを行ない、慎重に治療経過を観察する。

by internalmedicine | 2004-06-24 16:18 | 動脈硬化/循環器  

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