エストロジェン受容体の変異が動脈硬化のリスクの一つ

エストロジェン受容体の変異が心血管リスクと関連。エストロジェン受容体遺伝子の特定多型性が心筋梗塞(MI)や虚血性心疾患(IHD)と相関していることを発見。しかも既知のリスク要因と独立している。男性では意味がなかった。このことはなんらかの閉経後の女性のCVDリスクにエストロジェン受容体が役割を果たしている可能性がある。

Estrogen Receptor Gene Polymorphisms and Risk of Myocardial Infarction
JAMA. 2004;291:2911.

【序】虚血性心疾患(IHD)へのエストロジェンへの役割は不明。エビデンスではエストロジェン受容体α(ESR1)遺伝子の変異がIHDリスクへ影響をあたえる可能性があるが、その役割も不明。
【目的】“c.454-397T>C (PvuII)” と“c.454-351A>G (XbaI)”多型性遺伝子によるESR1 haplotypeの心筋梗塞(MI)とIHDリスクへの相関
【デザイン】2617名男性、3791名閉経後女性(Rotterdam Studyから)
55歳以上の参加者
【結果】
女性29%、男性28.2%:ESR1 haplotype1 alle
女性49%、男性50%:heterozygous carrieres
女性22%、男性21.4%でno carrier
平均7年のフォローアップで285名(女性115名、男性170名)心筋梗塞、440名(女性168名、男性272名)IHDイベント、97名が致死的
心血管リスク補正後女性のhaplotype 1のheterozygous carrierではMIのリスク増加(イベント比2.8%、相対リスク2.23;95%CI 1.13-4.43)で、非キャリア(event rate 1.3%)、homozygous carrierでは(イベント比3.2%、RR 2.48;95%CI 1.22-5.03)
IHDイベントに対しても同様の相関。
女性ではhaplotype 1の致死的IHDに対する影響は非致死的IHDに比べて大きい。
男性ではESR1 haplotypeはMIのリスクと相関せず、IHDのリスクとも相関せず。
【結論】
この住民ベース前向きコホート研究でESR1 haplotype 1を有する閉経後女性はMIやIHDのリスク増加、既知の心血管リスクと無関係である。男性ではこの相関が見られず・・

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WHI研究による悲惨なホルモン補充療法の結果が単にエストロジェンを補充するだけではリスクを増加させるだけという奇妙な結果になりましたが、
女性ホルモン欠失が動脈硬化に直接つながるというほど、そう単純なものではないことを示します。この受容体をノックアウトした場合いかなる変化が生じるのでしょう。


・・・・核内受容体はむずかしいですねえ・・・

by internalmedicine | 2004-06-24 16:22 | 動脈硬化/循環器  

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