低炭水化物・高脂肪食(Atkins食)の減量効果( A TO Z Weight Loss Study)の結果と疑問
2007年 03月 07日
“The A TO Z Weight Loss Study”の結果が報告された。高脂肪食・低炭水化物ダイエットであるAtkins食事による効果を肯定するものであった。この食事方法に関しては、現象的には確かに体重減少という効果があるようである。ただ、そのメカニズムや危険性に関しては諸手を挙げて産生というわけにはいかないと思っている。
Gardnerらは、過体重・肥満、非糖尿病、閉経全女性を、4種の炭水化物含量の食事をランダムに割り付け、1年間の変化を評価
Atkins (very low carbohydrate)
Zone (low carbohydrate)
LEARN (low-fat, high carbohydrate)
Ornish (very high carbohydrate)
Atkins食はもっとも体重減少が大きく、1年のフォローアップ期間を通して包括的なbenefitを有する代謝への影響が見られた。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial
JAMA. 2007;297:969-977.
平均12ヶ月の体重減少
Atkins:-4.7 kg (95% confidence interval [CI], -6.3 ~ -3.1 kg)
Zone, -1.6 kg (95% CI, -2.8 ~ -0.4 kg)
LEARN, -2.6 kg (-3.8 ~ -1.3 kg)
Ornish, -2.2 kg (-3.6 ~ -0.8 kg)
Zone、LEARN、Ornish群では差に関して統計学的有意性はなかった。
12ヶ月後、Atkins群でセカンダリアウトカムである代謝に関して有益性が認められた。
・Adkinsダイエットにより生じたケトーシスの事例で、重症となり、軽度膵炎・胃腸炎を生じた報告
A life-threatening complication of Atkins diet
The Lancet, Volume 367, Number 9514, 18 March 2006
・低炭水化物食の体重減少は水分喪失によるもので、一過性の現象という考えもある。決していわゆる“体の代謝が変わった”というミラクルではなく、単純に食事由来の利尿作用によるものとも考えられ、炭水化物摂取を制限による体水分組成の変化、肝臓・筋肉のグリコーゲン蓄積の移動によるものという考えである。グリコーゲンの各1gあたり水2gが動く。肝臓のグリコーゲン蓄積は100g、筋肉は400gである。これで約1Kgほど移動する。 対象者たちはこの変化を喜び、その虜になっているのすぎないという反論である。
・カタボリズムからのケトン産生と内因性脂肪の変化がある。ケトンは腎臓で濾過され、非吸収性のアニオンであるが、腎尿細管によるNa排泄増加と水分喪失を促すこととなる。
800カロリー低炭水化物・高蛋白によるケトン産生性食事は同じ800カロリー混合食との比較で10日で4.5Kgvs 2.8Kg体重減少となり、初回の変化が出現する。
エネルギー・窒素バランスの研究によれば、結局はこの体重減少は水分喪失によるもので説明可能である。故に、この利尿作用は初期反応だけのものという考えである。
by internalmedicine | 2007-03-07 08:46 | 動脈硬化/循環器