頸部へのマニピュレーション:無資格治療の危険性
2007年 03月 15日
無資格・疑似医療行為を放映すること自体が、2つめの“あるある事件”だと私は思う
整体と称する中に、正当な資格がないのにかかわらず、施術と称したり、診療と称した疑似医療行為を行い、それが高じて看板などに書かれていたり、中には、テレビ出演さえされている場合もある。
マニピュレーションという技術は有害性がゼロというものでなく、有益性と有害性が議論されている治療方法なのである。
正当な資格無く、マニピュレーション・manipulation・用手的なんたら・・・などと称して行っているのを放置していてはいけないのである。
オーストラリアではこの手技に関して検討がなされはじめた・・・
用手治療はルーチンに非特異的頚部痛治療に用いられ、少なくともある状況下では有効である。
テクニックとしては、manipulation法(椎体関節への高速度で押し出す(high velocity thrust directed))やりかた と 高速度でない(do not involve a high velocity thrust))やり方であるmobilisation法に分けられる
manipulaitonは重篤な脳血管損傷の小リスクと関連し、mobilisationは一般的に安全な方法と考えられている。
しかし、臨床にてmanipulationは、mobilisationより有効と考えられている。
急性の頚部痛への用手治療へのトライアルは少なく、manipulationとmobilisationの有効性を比較した論文も少ない。
頸部のmanipulationは若年成人の椎骨・脳底動脈卒中の独立したリスク要因である
(参考文献:Neurology. 2003 May 13;60(9):1424-8.、Stroke. 2001 Oct;32(10):2441.)
このメカニズムは椎骨動脈の内膜や中膜の解離によるものと推定され、めまいや平衡感覚異常、より重篤な"locked in" syndromeやワレンベルグや死に至る可能性がある。
100万~1万治療毎に1回の重篤な合併症と推定。しかし、申告制度や事故の標準システムがないためリスクはもっと高い可能性がある。
頸部mobilisationの脳血管合併症は報告されているが、一過性・軽症であり報告されてない可能性がある。
頸部menipulationは利益より有害性が多いものであるかどうか、専門家の間で長期間議論が続いている。
頸部痛に関するエビデンス:解釈は慎重に!
(http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_405.htm)
システミック・レビュー:非特異的頚部痛
The clinical course and prognostic factors of non-specific neck pain: a systematic review.
Pain. 1998 Jul;77(1):1-13.
頸部・背部痛のmanipulationとmobilizationの有効性
Efficacy of spinal manipulation and mobilization for low back pain and neck pain: a systematic review and best evidence synthesis.
Spine J. 2004 May-Jun;4(3):335-56.
ミスターマリックが胃内視鏡をもちいたマジックを行った・・・フジテレビの番組である。この問題ではフジテレビはお詫びや訂正などがなされていない。
2006年、8月29日フジテレビ放送の「Mr.マリック VS 世界の超人 異種格闘技戦」 の番組内で博多華丸の胃の中にトランプカードの切れ端を入れるという超魔術を見せた。その際に、胃の中のトランプを確認するために、マリックが胃カメラを操作し華丸の胃の中を覗くという医療行為に相当する行為を行った。実際にそれを行うにはマリックが医師の資格を保有していなければならない。反対に、実際にマリックが華丸の胃の中に胃カメラを挿入していない、のなら医師法違反にはならないが、そうなれば超魔術の主旨における成功にならない。結論として、超魔術の企画設定として大きな問題点を露見するものであったと思える。
内視鏡自体がちゃちなしろもので、画像も操作と同時性がなかった・・・その技量の低さの方が気になったほどなのだが、これは、そのまま放映すること自体矛盾を含んでいるのである。
by internalmedicine | 2007-03-15 08:51 | 運動系