心筋エネルギー

New Engl J Med Volume 356:1140-1151 March 15, 2007 Number 11

"Energy-Starvation Hypothesis"という、機能不全心というのはエネルギーの枯渇であるという概念自体は古く、1939年HermannとDecherdが、“The Chemical Nature of Heart Failure”という記事で、クレアチンの減少を報告している。
続く20年、エネルギー欠乏仮説は様々なグループに受け継がれた。
心臓のエネルギー代謝:心筋energeticsは、トピックとなっている。
β‐遮断剤、ACE阻害剤、ARBのようなエネルギー温存治療が予後改善をもたらすなど心不全治療のトピックとなったためである。
痩せ馬に栄養を与えるなら、回復して、低下したレベルではたらく。

心筋エネルギー代謝


3つの成分からなる
1)基質利用
基質の細胞内取り込みとβ酸化と解糖によるbreakdownであり、この過程はCoAの形成を生じ、Krebs回路へ供給され、NADHや炭酸ガスを産生する。

2)酸化リン酸化、エネルギー産生
呼吸鎖I~IVによるNADHから酸素への電子伝達過程、内部ミトコンドリア膜を通した蛋白電気化学的勾配(μ H+) をNAD,水と同様形成する
この勾配は、F1、F0 ATP synthaseで形成され、ATPを産生する
非共役蛋白(UCPs)はミトコンドリアによりATPより熱を産生させる

3)エネルギー伝達・利用
心筋ATPaseや他のATP消費反応(たとえば、筋細胞膜や筋小胞体イオンポンプのような)のエネルギー運搬と消費
ATP運搬は、 creatine kinase energy shuttleにより行われる。
心筋で産生されないクレアチンは、creatine transporterにて取り込み






3番目の代謝成分において、ATPの運搬利用、ミトコンドリアのkinaseはATPのクレアチンへの高エネルギーリン酸化輸送を触媒し、リン酸クレアチンとADPを形成する
リン酸クレアチンは、ATPより小さい分子で、ミトコンドリアから心筋繊維へ迅速に拡散する。心筋線維クレアチンkinaseはリン酸クレアチンからATP再合成を触媒する。
リン酸クレアチンからリン酸を取り去られ、遊離クレアチンとなり、ミトコンドリア内で拡散する。
クレアチンは肝臓・腎臓で合成され、心臓へ輸送される。取り込みは50倍濃度で特異的な血液・膜クレアチン輸送系を介する。クレアチンkinaseは心臓内の総クレアチンプールのの2/3のリン酸化を触媒する。このクレアチンkinaseの重要な役割はエネルギー緩衝系の役割である。

エネルギー需要が供給より過剰となったとき、リン酸クレアチン値は低下し、正常値にATPが維持できるよう緩衝が働く。free ADPの増加は細胞内酵素の機能を抑制し、心筋修飾機能の低下をもたらす。リン酸クレアチン値の低下は心筋機能の低下を意味する。それはATP値が変化無くてもそうである



組織標本のATPとリン酸クレアチンはリン-31 MR(31P-MR)スペクトロスコピーで測定する方法
31P-MR spectraはリン酸クレアチンのピークとなり、3つのリン酸核(γ-ATP、α-ATP、β-ATP)に分けられる。
心不全のもっともパワフルな評価方法は、糖・脂肪酸の代謝回転率を評価することと、酸化リン酸か、ATP輸送の評価である。
ATP、リン酸クレアチン、ADPの細胞レベルの評価は正常時には決定できないが、心筋線維周囲腔や筋小胞体や小胞体イオンポンプ近傍の濃度を測定する。

by internalmedicine | 2007-03-15 14:50 | 動脈硬化/循環器  

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