市中黄色ブドウ球菌感染におけるNSAIDの影響にみる建設的議論
2007年 04月 14日
この原著→読者からのReply→著者からのReplyの流れを読んでほしい
Severe Staphylococcal Sepsis in Adolescents in the Era of Community-Acquired Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
PEDIATRICS Vol. 115 No. 3 March 2005, pp. 642-6
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Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs and Invasive Staphylococcal Infections: The Cart or the Horse?
PEDIATRICS Vol. 115 No. 6 June 2005, pp. 1790
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Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs and Invasive Staphylococcal Infections: The Cart or the Horse?: In Reply
PEDIATRICS Vol. 115 No. 6 June 2005, pp. 1791
NSAIDs治療が感染症からショックを生じるのに重要な役割を果たす。TNF産生促進的に働き、白血球を介した宿主防御機能を抑制するというin vitroの知見から推定されるという話
Clin Infect Dis. 1995 Oct;21(4):977-80.
N Engl J Med. 1980 May 22;302(21):1179-85.
市中黄色ブドウ球菌感染の重症化の報告
Severe Staphylococcal Sepsis in Adolescents in the Era of Community-Acquired Methicillin-Resistant Staphylococcus aureusがあり、
PEDIATRICS Vol. 115 No. 3 March 2005, pp. 642-648
それに関して、解熱剤が関与しているのではないう懸念
PEDIATRICS Vol. 115 No. 6 June 2005, pp. 1791 (doi:10.1542/peds.2005-0777)
ひとつのイギリスの研究で黄色ブドウ球菌入院患者と大腸菌敗血症との関係、NSAID使用と黄色ブドウ球菌敗血症が多くなるという報告がある(Clin Infect Dis. 1997 Nov;25(5):1272-3.)とのこと
結果的には、著者らは
NSAIDsと市中黄色ブドウ球菌感染重症度の関係だけにとどまらず、皮膚・南部組織感染、侵襲性の患者などより広く学術的興味が広がる・・・と読者からの反応をさらに広げた対応で返している。
サラリーマンNEOのサラ語講座のような、学術的返し用語として考えればおもしろい。著者からのCorrespondを利用して自分の主張の正当性をさらに強化するという・・・
アンチ・ドラッググループの主張
・発熱や喉や鼻の炎症は、感染を防ぐための生体が持っている防衛反応
・強力な解熱鎮痛剤を一日三回、症状の有無に関係なく服用し続けると、正常な感染防御機構が抑えられ、治癒を遅らせる
・自然治癒力だけが頼り
というのがWebでひろった主張である。
いずれも一文ずつ明確に間違えた事実は主張していないと思う
一番の間違いをあげるとすれば、主張が極端であるということである
臨床をやっていればわかると思うが、絶対的な一部の間違いをのぞけば、判断というのはどちらが一方的に悪いということは臨床実地面では少ない。
たとえば疾患にともなうQOLの低下というharmと解熱剤による早期解熱にともなうQOL改善というbenefit/harmバランスを考慮に入れておらず、一方的にharmのみを強調し、学会活動というよりロビー活動やメディア活動に熱心で、情緒的煽動を繰り返しているのである。
以上のCA-MRSAとNSAIDの小児科医学雑誌のやりとりでは、互いに自重的だが、このやりとりに一つの方向性がみられて建設的なのである。
浜六郎氏もよいことを言っていて、いきすぎた薬剤至上主義に一石を投じたという面では氏の主張は貴重・・・だが、一般の医師からリスペクトが得られないのは、このバランスの悪さにあると私は思う。彼らは薬害原理主義者とでも言った方がよいのかもしれない。
by internalmedicine | 2007-04-14 10:14 | 感染症