老人のせん妄
2007年 04月 21日
だが、不幸なことに、医療施策作成者は全く理解していない。そんな中、現場の従事者は、せん妄予防に対する、系統的に取り組まなければ、様々なトラブルを具有することとなる。看護師などが医者個人に対処しろという脅迫じみた言動、あるいはその逆が生じるのが日本の医療の現状である。この問題は、施設内での対応を事前に討議し、系統的に対処すべき問題なのである。
BMJでシステミックレビューが掲載されたが、英国でも、老人のせん妄はそのインパクトの割に軽視されているとのことである。対応にて1/3程度ながらその頻度を減少させることができることと臨床上の注意点がまとめられている。
Clinical Review
BMJ 2007;334:842-846 (21 April)
サマリーポイント
• せん妄は老人の急性疾患ではよく見られる
• せん妄の発症は好ましからぬ臨床的結果と相関する
• せん妄は引き金因子と関連した、長期間を経過していない、変動する注意障害と意識レベル低下が特徴
• 健康状態の良くない老人に、ルーチンの認知機能評価をすることで、検出率を上げることができる
• ルーチンのケアのシステムの質を上げることで、すくなくとも1/3の患者で、予防可能であるという良質なエビデンスがある
リスク要因は65歳超、脆弱性、感染・脱水による入院、認知症、視力障害、聴力障害、腎不全、低栄養
せん妄は一見無害な薬物、たとえばβ遮断剤、H2遮断剤、抗ヒスタミン剤などが引き金になることがある。睡眠薬は特に注意すべき。
リスク要因を同定し、修正することでせん妄の予防に効果有りというエビデンスをInouyeとYoungはこのレビューで述べており、The Hospital Elder Life Program (HELP)(http://elderlife.med.yale.edu/public/public-main.php)や施設内における老人せん妄予防法としての一つのモデルであると述べている。このプログラムは視力・聴力、脱水、排尿、空腹、移動といった患者の基本的ニーズに注意を払うことを強調し、医薬品へ注意を払うことが重要というものである。
せん妄が生じたときは、要因の分析、薬物中止、支持療法、低酸素、水分補給、栄養補給、ベッドにいる時間を短縮すること、運動をさせるなど。
じっとしてない、徘徊、言語・身体的攻撃をしかける患者には患者自体の攻撃性を亢進させ、外傷を引き起こすので、抑制は避けるべきである。
システミックレビューでは低用量haloperidolがもっともよい適用であるというシステミックレビューがある(The Annals of Pharmacotherapy: Vol. 40, No. 11, pp. 1966-1973. )が、せん妄を呈する患者に対する向精神薬の使用に対する支持する・推奨するエビデンスは少ない。
risperidone(商品名:リスパダール)やolanzapine(商品名:ジプレキサ)は認知症を有する患者のせん妄には卒中リスクを増加する危険があるので使用は避けるべき。
by internalmedicine | 2007-04-21 08:31 | 医療一般